一歩足を踏み入れただけで、それまで急ぎ足だった時間の移り変わりが、ゆったりと感じられる。ディスプレイされた道具や器たちが、日常に自然に馴染んでいくことがイメージできる――。伊勢丹新宿店 メンズ館8階 イセタンメンズ レジデンスに、そんな、誰もが自然に心地よさを感じられる“JAXURY”をご紹介するスペースが誕生した。

伊勢丹新宿店メンズ館8階といえば、ちょっと気分を変えて一息つけるシックなカフェや、美しく香り高いフローリストもあり、ほかの人気フロアとはひと味違う魅力にあふれている。多くの伊勢丹ファンが、特別なお気に入りフロアとしてチェックしているのも頷ける。心地よい上質な日常服ブランド「オーカ・トランク」の奥の空間が、JAXURY SPACEだ。

発売中のFRaU5月号でも総力特集しているJAXURY。

FRaU5月号は、ファッションから器、宿泊などオールジャンルで「JAXURYアワード」として120のブランドを選出・表彰した大特集号。好評発売中!

JAXURYとは、日本発(Japan’s)ほんもの(Authentic)、心地よさ(Luxury)を意味する、Japan’s Authentic Luxuryの略称造語。各界の有識者で結成されたJAXURY委員会によって、日本のものづくりやサービスにフォーカスしながら、日本発のラグジュアリーを世界に向けて発信していくプロジェクトだ。

日本が誇る“もの・こと・サービス”の真の価値を提供し続けているブランドを定期的に紹介するこのスペースで、まず最初に、4月29日と30日の2日間、約400年前に京都・宇治に築窯された朝日焼」十六世、松林豊斎氏による呈茶イベントが開催された。「朝日焼」はJAXURYアワードで「日常的な上質さ部門賞」を受賞している。

朝日焼には2つのコレクションがある。一つは、茶道具を中心とした朝日焼十六世松林豊斎作のもの。こちらのため息の出るような美しい茶盌は「月白釉流シ金彩茶盌」¥275000。
朝日焼のもうひとつのコレクションは、職人による朝日窯工房作のもの。茶器以外にも、毎日使いたい、こちらの洗練されたカップ&ソーサーも朝日窯工房作。デザイン眞城成男(stera)¥12540。
「侘び寂び」より明るくて輝きがある、小堀遠州好みの「綺麗さび」の流れをくむ朝日焼。ほかにない優美な魅力は、憧れる女性も多い。伊勢丹新宿店 メンズ館8階で展示販売中。

ワークショップで用意された宇治茶やチョコレートもJAXURYブランドである。JAXURYアワードで「唯一無二部門賞受賞」の「京都宇治茶房 山本甚次郎」のお抹茶、同アワードで「利他部門賞受賞」の鎌倉発祥の「メゾンカカオ」のチョコレートモナカ、「ハナレモナカ」。それらのブランドには、ものづくりへの真摯な姿勢を映し出す物語がある。

「今日のテーマは、“お茶が人生を豊かにする”です。生活リズムの中に、お茶を点てて飲むことを取り入れる。そうしたら、必ず人生が豊かになると断言できます」ワークショップが始まってすぐ、松林さんはそう力強く語った。

「簡単に、美味しく」お茶を点てれば、世界は変わる

「最初にこのワークショップのお話をいただいたとき、自分は朝日焼の人間だけれど、器について語るのではなく、むしろ『器を使うことで感じる豊かさ』を伝えたいと思いました。では、どうしたらその実感を持ってもらえるだろうと考えたとき、『そうだ、参加者の皆さんにお茶を点てていただこう』と閃(ひらめ)いたんです」

松林さん自身、日々茶道具を作っていることもあり、お茶とは切っても切れない日常を送ってきた。でも、お抹茶を点てることが日常的だったからこそ、とくに、「お茶が人生を豊かにしてくれている」と実感したことはなかった。それが、一昨年の春、新型コロナウィルスが世界的に感染拡大したタイミングで、「自分でお茶を点てて飲む。1日の中にそういう時間を持つことはなんて贅沢なんだ」と気付いたという。

「器について語るのではなく、むしろ『器を使うことで感じる豊かさを伝えたい』から」そのためには「実際にお茶を点てていただこくのがいい」と閃いた松林さん。自身も、お茶を点てることで、改めて救われたと語る。

「緊急事態宣言が発令されてから2カ月間は、工房には誰にも出勤させずに、自分1人だけで作業をしていました。自分自身の仕事がはかどらなかったわけではないですが、全く人に会わない時間は、とてもしんどかった。周りに、会話できる相手が誰もいなくて、家に帰れば陰鬱なニュースばかりが耳に入ってきて、気が滅入る。そんなときに、毎朝必ずお茶を点てる時間を作ってみたら、なんだか心が整うような気がして、『あ、お茶に救われている』と思ったんです。仕事を始める前にお茶を点てることで、じっくり器を眺めたり、今日は濃いめにしようか薄めにしようか考えたり、それを飲んで心から『美味しいな』と感じられたり。自分の時間に、それまでにはないような奥行きが生まれた。でも、自分以外の人に目を向けたときに、お茶を点てて飲むことはハードルが高いので、それをごく簡単な方法で楽しんでいただく意味は大きいのかな、と。ですから今回は、美味しく、簡単に、失敗なく、お茶を点てる方法をお伝えしようと思います」