76歳母の「介護サービス」にお金を出し惜しみ、「予期せぬ入院」で大損した51歳息子の後悔
最近、認知症の疑いがある76歳の母親をもつ中村さん(51歳、仮名=以下同)。両親のことを考えてヘルパーの利用を検討したものの、経済的な不安によって見送ったことは前編記事<「認知症の疑いがある76歳母親」のヘルパー利用を「51歳の実の息子」が断った残酷な事情>でお伝えした。
しかし、たとえ、お金の面で不安があっても、必要な介護サービスを削るのは、介護する側・される側、両方にとっておすすめできない。
その後、中村さんやご両親にどんなことが起きたのか。著書『身近な人の介護で「損したくない!」と思ったら読む本』『介護認定審査会委員が教える「困らない介護の教科書」』がある介護のプロ、河北美紀さんがお伝えする。
ヘルパー利用を控えたために……
中村さんの快諾を得られず、自身も「まだ大丈夫です」と言ってヘルパー利用をせずになんとか過ごしていた母親の純子さん。
そんなある日、いつものように送迎車で純子さんをデイサービスにお連れした介護職員。まだ厳しい残暑が続いている8月下旬でした。

デイサービス到着後は水分補給をしてもらい、血圧を測ろうとしたとき、彼女の変化に気がつきました。顔色が悪く、いつもの元気がなかったのです。
「純子さん、どうかしましたか? 今日はなんだか顔色が悪いですね」
と声をかけると、純子さんは、
「なんか頭が痛くて……」
とぐったりして言いました。その時、職員はピンときました。
(おそらく熱中症だ)
介護職員は純子さんに、
「昨日はエアコンをつけて寝ましたか?」
と尋ねました。彼女は、
「エアコン? ああ、つけたかな? つけたと思うけど、ちょっと分からないわね」
と答えました。
この時点ではまだ推測ですが、純子さんは30度を超える熱帯夜から翌朝まで、冷房をつけずに過ごしてしまい、熱中症になってしまったことが考えられます。そうなると、一緒にいたご高齢のご主人のことも心配です。
純子さんがぐったりして危ない状態であると判断し、介護職員は急いで救急車を要請しました。介護職員の推測通り、彼女は病院で「熱中症」と診断され、そのまま入院することになってしまったのです。