「まるで自分の恋愛を見ているようでつらかった」

こんなコメントがSNSや書評に並ぶ『僕の狂ったフェミ彼女』(ミン・ジヒョン著)。フェミニストになった彼女と、無意識な優しさでミソジニー(女性嫌悪)反応を繰り返してしまう彼のスンジョンの出来事を綴った恋愛小説だ。その描写はあまりにリアルで、男女ともに思い当たる節が多く心が痛くなる。

1200人以上の男女の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマに発信している文筆家の清田隆之さんと、日本の性の問題を発信し続ける「#なんでないの プロジェクト」代表でアクティビストの福田和子さんも、この小説が伝える問題に関心を持ったという。前編では、日本社会でフェミニズムに向き合うつらさや厳しさについて話し合ったおふたり。後編では、どうすれば男女は分かり合えるのか、この難題について語ってもらった。

インタビュー・文/上田恵子

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「フェミニスト」は当たり前という男性意識

福田:私は比較的コンサバないわゆる日本の一般家庭で育ちました。おばあちゃんも一緒に暮らす生活のなかで、「今の若い男の人はかわいそうねえ。仕事も育児もしなきゃいけないなんて」みたいな言葉もよく耳にしています。育児=大変なこと、マイナスなこと、というイメージですね。

でも、私が留学したスウェーデンでは、育児を比較的ポジティブにとらえていて、「二度と取り戻せない貴重な時間を我が子と共有するのは親の権利」と考えているんです。先ほど出てきた「家族サービス」という言葉もそうですが、子どもだって親に「義務を果たしてます」という態度でイヤイヤ遊んでもらうより、心から一緒にいたいと思って遊んでもらうほうが絶対にハッピーですよね。そういう意味では、ギスギスするのもハッピーになるのもマインドセット次第なのかなって。

清田:確かにそうですよね。でも、子育てや生活を自分の「権利」だと見なす発想って日本では定着していないものだと感じます。

福田:これは最初の留学時、まだスウェーデン社会のことをよく知らなかった頃の話なんですが、当時付き合っていたスウェーデン人の彼に「あなたはフェミニストなの?」とちょっとビビリながら訊いたことがありました。そうしたら「えっ、フェミニストじゃないってどういうこと? フェミニストじゃないってことは、ジェンダー平等じゃなくていいと思っているって意味?」と言われたんです。むしろ「なんでそんなこと訊くの?」みたいな空気になって(笑)。あれは感動的でしたね。元彼は、特別にジェンダーを学んでいるわけでもない、普通に高校を出て仕事をしている人でした。

清田:すごい、なかなか出てこない言葉ですよね。

福田:ですよね。他にもエピソードがあるんです。彼の家に遊びに行ってご両親と食事をした際、お父さんのワイングラスが空になっていたので何気なくワインをつごうとしたら、「僕はあなたと対等に話をしたいと思っている。気持ちはありがたいけどワインなら自分でつげるし、まるで僕の立場が上みたいに感じられて居心地が悪いからやらないで」と言われたんです。大学のパーティーでも教授に同じことを言われました。

清田:その場面、日本だと気遣いやマナーくらいの勢いでつぐことを推奨されますもんね……。

福田和子さん(左)/スウェーデンに留学し、公衆衛生を学び、緊急避妊薬の問題など日本でなかなか進まないSRHRやジェンダーについて発信するアクティブスト。#なんでないのプロジェクトの主宰でもある。塚原久美著の『中絶がわかる本 MY BODY MY CHOICE アジュマブックス』では解説を担当。

清田隆之さん(右)/文筆家、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに執筆活動やラジオ出演などを行っている。『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』など著書多数。