「彼女の気持ちが痛いほどわかり、彼のわかってなさに涙が出た」
「気持ちは好きでもこんなにも分かり合えないのはなぜなのか」
「まるで自分の恋愛を見ているようだった。男性にも読んでほしい」

2022年3月発刊以来、SNSにこんな言葉が並ぶ書籍『僕の狂ったフェミ彼女』(ミン・ジヒョン著)。なんともセンセーショナルなタイトルだが、2019年韓国で発刊され、話題をさらった。台湾版では、「キム・ジヨン(韓国で2016年に出版され、130万部以上のベストセラーになった『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公の女性の名前)が結婚前にこの小説を読んでいたら人生が変わっていたかも」というキャッチコピーがつけられたという。

この物語は他人事ではない。日本でも同じように「分かり合えない気持ち」に苦しむ男女は多い。なぜ、男女は分かり合えないのか──。

この物語を題材に、1200人以上の男女の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマに発信している文筆家の清田隆之さんと、日本の性の問題を発信し続ける「#なんでないの プロジェクト」代表でアクティビストの福田和子さんのおふたり語ってもらった。

【あらすじ】主人公は、大企業に就職し3年目を迎えた「僕」ことスンジュン。彼には未だに残る古傷があった。大好きだった彼女に突然別れを告げられ、その彼女を今でも思い出してしまうということだ。いろんな女性とデートを繰り返してみるものの、なかなか結婚への意欲がわかない。

そんなとき、偶然、忘れられない「彼女」と思わぬ場所で遭遇をした。やはり「彼女」とは運命だったに違いない!と心が動き出すが、「彼女」の様子がおかしい。なんと「彼女」が「フェミニスト」になっていたのだ。以前と同じスタンスで振舞うスンジュンと「彼女」との会話はすれ違いまくる。スンジュンはフェミニスト活動から彼女を救済したいと奮闘するが、逆に彼女の心は離れていく。果たしてふたりの未来は……。

インタビュー・文/上田恵子

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あまりにリアルで読んでいてつらかった

清田:『僕の狂ったフェミ彼女』は、学生時代に交際し、別れてからもずっと未練を引きずったままだった元カノと4年ぶりに再会したら、バリバリのフェミニストになっていて戸惑う僕――という設定の物語ですが、まずこれが恋愛小説として成立していることに衝撃を受けました。『ロミオとジュリエット』じゃないですが、「障壁」や「すれ違い」によって展開を盛り上げるという、いわゆる“恋愛モノ”の王道をフェミニズムでやっているところがとにかく驚きで。

福田:決して憎しみあっているわけではなく、お互いに相手への気持ちはあるんですよね……。

清田:そうなんですよね。気持ちはあるんだけど、いくら彼女が性差別やジェンダーギャップについて説明しても彼氏のほうはとんちんかんな理解ばかりで、なんなら「変な思想に洗脳された彼女を救い出すんだ!」というヒロイズム的なマインドすら持ってしまっている。かつて携帯電話がなかった時代のすれ違いで発生したドキドキやモヤモヤを、「認識のすれ違い」という構図で作り出している。

福田:そもそも、この『僕の狂ったフェミ彼女』というタイトルの小説を読むこと自体に、ものすごく勇気がいったんですね。「“僕”はこの本の中でどんなことをやらかすんだろう?」という意味でのドキドキというか不安がありました。そして実際に読み始めると、僕=スンジュンは、私自身が今まで聞いてきた“イラッとする言葉の集合体”みたいな感じの人で(笑)。普段の生活で見聞きしてきたことが集まっている。正直、読み進めるのがつらくて、かなり体力を消耗しました。

清田:“彼女”には名前がありませんが、彼女のキャラクターは福田さんにどう映りましたか?

福田:ちゃんと言うべきことは言う、カッコイイ女性だと思います。とんちんかんな彼を突き放してつっけんどんに扱っても、それだけで終わらずちゃんとフォローもするし、時には彼にグラッとときめくこともある。私の周りにはフェミニストが多いのでよくわかるんですが、この「理想と現実との間のゆらぎ」がすごくリアルで、深い共感を覚えながら読みました。でも、正直言うと、つらい場面も多く、一気にサラッと読むことはできませんでした。

福田和子さん(左)/スウェーデンに留学し、公衆衛生を学び、緊急避妊薬の問題など日本でなかなか進まないSRHRやジェンダーについて発信するアクティブスト。#なんでないのプロジェクトの主宰でもある。塚原久美著の『中絶がわかる本 MY BODY MY CHOICE アジュマブックス』では解説を担当。

清田隆之さん(右)/文筆家、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに執筆活動やラジオ出演などを行っている。『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』など著書多数。