「停滞」どころではない、日本の賃金は本当は「下がって」いる

パートタイム問題を覆い隠す欠陥統計
野口 悠紀雄 プロフィール

税制が働き方に大きな影響を与える

図表1でも2でも、2018年頃に、パートタイマーの賃金が上昇している。

これは、18年に行われた税制改正の影響だ。具体的にはつぎのとおり。

従来は、配偶者の給与収入が103万円を超えれば、配偶者控除を受けることができなかった。そこで、パートなどで働く人は、労働時間を抑えて働いていた。これが「103万円の壁」といわれたものだ。このように、税制は、働き方に大きな影響を与える。

日本の場合に女性の就業がパートタイムを中心にしたものになってしまうのは、このような税制の存在が原因であるということができる。

ところが、2018年の改正で、配偶者の給与収入が103万円を超えても、150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除を受けられることになった。そして、201万5999円まであれば控除を段階的に受けられるようになった。この改正に対応して、人々は労働時間を増やしたのだ。

ただし、いまでも制約は残っているのだから、本当はもっと働きたい人が、労働時間を抑えている可能性は定できない。労働力が減少する社会において、このような制度が適正かどうかは、大いに疑問だ。

配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残だ。こうした制度を変えることによって、女性の社会参加を増やすことが可能だろう。

 

日本の賃金統計は時代遅れ

税制などの制度とともに、統計も重要だ。

毎月勤労統計調査は、2019年に不適切な集計方法で問題となった。これは確かに問題だ。ただ、それだけでなく、フルタイム当量の考えを取り入れていないという意味で、統計の基本的設計についても、現代的な要請に合うものになっていないと言うことができる。

パート問題は日本の賃金問題で重要な位置を占める。しかし、これまで述べたことから分かるように、それについて適切に判断をするような統計になっていないのだ。

アメリカではフルタイム当量ベースの労働者数や賃金が計算されている。日本もならうべきだ。

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