中国政府発表の「作られた経済指標」をいよいよ無視できなくなってきた理由

日本企業は幻想から目を覚ませ
朝香 豊 プロフィール

財政・金融支援を行っても不十分

今後の中国経済の行方についても、各社は揃って厳しい見通しを出している。

野村は、中国経済の今年の4月~6月期の成長率予想を、従来予想の3.4%から1.8%に大幅に引き下げた。同時に2022年の年間の成長率見通しを、従来の4.3%から3.9%に下方修正した。従来の数字でも中国政府が今年の目標値としている5.5%を大きく下回っていたが、この目標値からさらに乖離する数字を提出した形となっている。

上海に代表される長江デルタ地帯は、中国の金融、経済、ロジスティクスの中心地であり、上海のロックダウンは中国経済全体に多大な影響を及ぼす。5月中には在庫していた部品などが不足して、自動車などの主要産業の生産全般に遅れが出ることも懸念されている。野村はこのような事情も当然ながら考慮しているはずである。

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野村は、中国政府が今後、預金準備率を0.25%引き下げ、政策金利も0.1%引き下げるなどして、景気の下支えに乗り出すと予測している。だが、現在の習近平政権が進めているゼロコロナ政策はオミクロン株の伝染性の高さから、従来株の抑え込みと比べて遥かに費用もかかり、達成することが困難であり、この規制を緩めないことには大した政策効果は出ないとの見通しを示している。

さらに、ロシアとウクライナの戦争や米国の急激な利上げ予想に焦点が向けられる中で、中国経済の減速が過小評価されているのではないかとの考えも披露した。その上で野村は、自らの予測を引き下げただけでなく、今後数週間のうちに中国経済の予測を下方修正するエコノミストがもっと増えることになるとも予測している。

オランダ発祥の総合金融機関INGの中国担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏も「コロナ対策のロックダウンによって生活必需品の供給が遅れているだけでなく、既に労働市場に影響を与えているサービス業や製造業の先行き不透明感も増しているため、ロックダウンの影響がさらに大きくなることは必至だ」として、中国経済の先行きに疑問符をつけた。

 

また、中国が今後、財政・金融政策による支援を行っても、長期にわたるロックダウンで受けた打撃を完全に相殺するには不十分だとし、財政支援が遅れる場合にはGDP予想をさらに下方修正する必要が出てくるとも述べている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国政府が進めているゼロコロナ政策によって消費者の消費能力は低下しているし、工業生産も抑え込まれている。おまけにここに不動産崩壊が加わってもいる。住宅販売は1月~3月期で25.6%落ち込み、新規着工も17.5%落ちている。コロナの抑制を狙ったロックダウンは、深圳、上海といった主要な産業センターに広がった。こうしたロックダウンは今なお続いており、今年の4月~6月期のGDP成長にも影響が懸念される、とも記した。

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