映画が女性たちに向けてきた「視線」の正体…何のためにそのシーンを描いたのか?

「Wの悲劇」から韓国映画まで

にわかに映画関係者のハラスメント、主にセクシャルハラスメントに厳しいまなざしが向けられている。榊英雄監督のセクハラが内部告発され映画が公開中止になったことに端を発し、彼と親しい俳優・木下ほうかから被害を受けたと女性が告発、出演ドラマは彼のシーンをカットしたうえで放送する措置をとった。

告発の動きは更に広がり、園子温監督から過去に被害を受けた女性が告発を行い、さらに園監督と多く仕事をしていた梅川治男プロデューサーの行いも注目されている。

この事態を重要視した是枝裕和監督をはじめとする映画関係者有志一同が「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」という声明を出し、また、映画に原作を提供した経験のある小説家の有志が「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」という声明を発した。あとに続いて声をあげる作家たちも増えている。

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大役を射止めるために

映画の世界で行われてきた、力のある者から力の弱い者への暴力的な搾取の現実を知るなかでふと思い出した映画があった。薬師丸ひろ子が主演した青春映画「W の悲劇」(1984年/澤井信一郎監督)である。

女優(ジェンダー平等の観点からしたら「俳優」と表記したいところだが、ここではあえて「女優」を使用する)を夢見る主人公の成長を描く青春ストーリーで、彼女が劇中で演じる作品が、夏樹静子の同名ミステリー小説『Wの悲劇』であるという、原作の使い方が一風変わった作品だ。

映画「Wの悲劇」の主人公・三田静香は、女が芸能界で生き抜くためにパトロンが必要不可欠であるというシビアーな現実に直面する。彼女はベテランスター女優・羽鳥翔(三田佳子)とパトロンのスキャンダルを肩代わりして矢面に立つ代わりに大役を得て、にわかに世間に注目されることになり……。

泥にまみれた芸能界で静香が心を揺らしながら何を選択するか、そのプロセスを演じる薬師丸ひろ子は青く固い蕾が花咲くように瑞々しい。スキャンダルを肩代わりするときの一世一代の名演技や、引き換えに獲得した役を熱演する場面、名曲「Woman~Wの悲劇」を背景にした薬師丸ひろ子のラストカットの表情などが鮮烈で、名作の誉も高い。

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