米国の姿勢が明らかに変わった
米国がウクライナ戦争の戦略を大転換した。戦争の目的を「ウクライナ防衛」から、事実上の「ロシア打倒」に切り替えたのだ。これに対して、ロシアはこれまで以上に「核の使用」をちらつかせて、威嚇している。米国は核戦争に陥る危険を、どう評価しているのか。
私は4月15日公開コラムで「米国は本気でロシアと対決する覚悟を固めている」と書いた。そう考えた理由は、ジョー・バイデン大統領が「プーチンを権力の座から追い落とせ」などと、強硬発言を繰り返していたからだった。
そんな見方は、最近のロイド・オースチン米国防長官の発言によっても、あらためて裏付けられた。オースチン長官は4月25日、アントニー・ブリンケン米国務長官とともにウクライナの首都キーウを訪問した後、ポーランドで開いた記者会見で、次のように語った。

この発言について、記者から真意を問われたホワイトハウスのジェン・サキ報道官は25日の会見で、こう答えた。
すると、記者から「ホワイトハウスには、長官発言がロシア国内で『西側は我々をやっつけようとしている。封じ込めようとしている』と受け止められ、それが『プーチンの権力を強める結果になる』という懸念はなかったのか」と質問が飛んだ。
報道官はこう答えた。

以上で明らかなように、国防長官の発言は失言ではない。そうではなく、これはバイデン政権で共有された見方なのだ。そして、一連のバイデン発言とも整合的である。振り返れば、バイデン大統領が3月1日の一般教書演説で「彼を捕まえろ」と絶叫したあたりから、政権はウラジーミル・プーチン体制の転覆を視野に入れていた、とみていい。
長官発言を額面通りに受け止めれば「米国はロシア軍が2度と他国を侵略できなくなるまで、徹底的に壊滅する」という話になる。私は、太平洋戦争で敗北した日本の軍部が、米国との戦いとその後の占領政策によって、完全に壊滅させられた例を思い出す。