チンパンジーとヒトのDNAが98.7%同じでも血縁関係でない納得の理由

血縁淘汰という進化のしくみ

近未来の大都市

近未来の大都市では、1000階建ての超高層ビルが林立し、人々はその高層ビルのなかで暮らしていた。欲しいものはすべて部屋まで届けてもらえるし、学校の授業はすべてオンラインである。

さらに、脳内の電流を操作することによって、寝ているあいだに見る夢のように、さまざまなことを疑似体験できる技術も実用化されていた。実際に体験するよりも鮮やかな景色を見ることもできるし、死ぬか生きるかといった極限まで危険なチャレンジだってできるし、それでいてじつは安全なのだから、ほとんどの人がこの技術を愛用していた。

そのため人々は、旅行に行くことはおろか、自分が住んでいる高層ビルから出ることもほとんどなくなっていた。

 【写真】超高層ビル人々は超高層ビルの自分の部屋からでなくなっていた photo by gettyimages

A氏は、そんな超高層ビルの100階に住んでいた。他の階に行くことは、ほとんどない。たしか10年ぐらい前に99階に行ったことがあったが、それ以来100階から出たことはなかった。生活は保障されているので、べつに働かなくてもよいし、A氏はのんびりと暮らしていたのである。

そんなA氏が、暇に飽かせていろいろなことを調べていたら、ひょんなことで1ヵ月後に大洪水が起きることを知った。大洪水によって、超高層ビルの何階まで水面下に沈むかはわからないが、上の階なら上の階ほど安全なことはたしかだろう。そこで、A氏はネットを通じて、超高層ビルの住人に上層階への避難を呼びかけた。

しかし、多くの人は、A氏の言葉を信じなかった。というか、ネットの情報量はすさまじいので、一つひとつのニュースに真剣に向き合っている暇がないのだ。同じ100階に住んでいる人たちも、A氏のことを笑うだけで、避難しようとはしなかった。

しかたがないので、A氏は一人で上層階への避難を始めた。身の回りの物を持ってエレベーターに乗ると笑われるので、A氏は階段を使った。その場合、1日に10階上がるのがやっとである。そうしてA氏は、毎日毎日10階ずつ上っていった。

しかし、なかにはA氏の言葉を、信じてくれる人も少しはいた。そういう人は避難を始めたけれど、それらの人々も、洪水が起きることをA氏ほど確信しているわけではない。半信半疑の人がほとんどなので、A氏ほど熱心には避難をしない。せいぜい1日に2~3階上がる程度であった。

そうこうしているうちに、大洪水が起きた。残念なことに多くの犠牲がでたけれど、A氏を信じた人のなかには助かった人もいたという。

関連記事