どこかふわふわしている感覚が続いた

世間を大きく騒がせたセンセーショナルな小学女児誘拐監禁事件。その“元誘拐犯”と“被害女児”が、15年後に再会する――。二人の間にあったのは儚くてかけがえのない絆と宿命であっても、他者には理解されることのない歪な人間関係に映る。恋でも友情でもなく、ただひたむきに魂でお互いの存在を求め合うさまを描いた映画『流浪の月』が公開される。

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10歳で誘拐の被害女児となった家内更紗を広瀬すず、その事件の加害者とされた当時19歳の青年・佐伯文を松坂桃李が演じる。監督を務めた李相日(リ・サンイル)と広瀬さんは、映画『怒り』以来6年ぶり、2度目のタッグとなった。李監督は広瀬さんの芝居に対し、「たどり着いてくれた」と表現する。一方、広瀬さんはクランクイン前から、芝居に対して手触りが何もない感じがずっと続いていたという。

どこかふわふわしているという自覚があって、『やばいです』と、先に自分が抱えている現状を監督にお話させてもらいました。李さんは私が思っている以上には、気にされていなかったみたいですが、いざ撮影に入ってみると、監督の言葉の意図をつかめないことが多くて、私がぽかんとしちゃうことが何度も訪れました。でも、怒るとか急かせることはなく、自発的に生まれてくる芝居を辛抱強く待ってくださったんです。

人から受けて生まれる感情やお芝居だったら、いけるところまでいけるんですけど、自分発信で何か言葉を発したり、行動したりするとなると途端に難しくなってしまって。それはきっと、更紗と私がつながらなくて、感情とカラダの動きが伴っていかなかったからだと思うんです。だから、ずっとモヤモヤしていましたが、その戸惑いさえも監督は理解し、待ってくださったんです

撮影/田形千紘