「倍速視聴」は進化か退化か。「プリキュア」「銭天堂」脚本家が抱く危機感

作り手が語る倍速視聴 前編

先日、若い世代を中心に広がる「倍速視聴」について、若者の消費行動に詳しい20代のゆめめさんと40代の筆者で語り合った「ドラマも『切り抜き動画』で観る…『倍速視聴派』Z世代の視聴実態」は大きな反響を呼んだ。「1時間ドラマを5分30秒で観る」と語ったゆめめさんの感覚には、共感と驚き、批判、さまざまな声がタイムラインに溢れた。

では、こうした状況に「作り手」はどんな思いを抱いているのか。拙著『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)で現役の脚本家としての気持ちを語ってくれたのが、アニメ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』のシリーズ構成や「プリキュア」シリーズの各話脚本などを務める小林雄次さんだ。携わった作品が早送りされることについて、小林さんに率直な思いを聞いた。

本書は、現代ビジネスでの不定期連載「映画を早送りで観る人たち」に追加取材と大幅な加筆を行ったもの。
 

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稲田 映像作品を倍速視聴したり、10秒スキップしたりする習慣は、若年層の間ではほとんど「当たり前」になってきています。2021年3月の民間調査では、20代全体の半数近くが倍速視聴経験者でしたし、私が2021年12月に講義した青山学院大学の調査(2〜4年生128名を対象)では、倍速視聴を「よくする」「ときどきする」が66.5%、「あまりしない」も足すと87.6%が倍速視聴経験者でした(詳しくは、「『鬼滅の刃』『イカゲーム』も早送り…大学生が『倍速視聴』をする理由」を参照)。

小林 予想以上に多い、という印象ですね。各種の動画配信サービスが倍速視聴を実装していることは以前から知っていましたが、ここまで多いとは。僕自身も倍速視聴や10秒スキップはするんですけど、それは仕事のために短時間で必要な映像資料や参考作品をチェックするためであって、楽しんで観る際には通常の速さで視聴します。倍速視聴や10秒スキップは、僕の中では「視聴作業」であって「視聴」ではありません。それに則るなら、そんなに多くの人が「視聴作業」をしているんだな、と。

稲田 書籍化にあたり、小林さんの担当授業(日本大学芸術学部・映画学科/映像表現・理論コース シナリオ専攻)を受けている学生さん、つまり脚本家の卵たちにも書面でヒアリングさせていただきましたが、彼らの中にも10秒スキップを駆使して観ている人がいて驚きました。

小林 映像を専攻している学生のほうが、一般の学生より映像に対してシビアなので、つまらなければ容赦なく倍速視聴や10秒飛ばしをするのかもしれません(笑)。

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