市場関係者は、驚きを通り越して呆れている
日銀の黒田東彦総裁の失言になりかねなかった頑な「金融緩和策の継続発言」で一気に進んだ円安の危機が、ニューヨーク株急落という“神風”によって帳消しになった。

今回の急落を受けて、米連邦準備理事会(FRB)が日本時間の5月3、4日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)にて決定する構えを見せていた「金融引き締め」の加速を思いとどまり、円安の原因となる日米の金利格差の拡大ペースが鈍るのではないかとの観測が浮上。円相場がひと息ついたのである。
あのまま円安が進んでいれば、黒田総裁の発言が大きな失言として厳しい批判を浴びる事態になりかねなかっただけに、ニューヨーク株急落は、黒田総裁にとって蒙古軍の襲来から鎌倉幕府を救った“神風”のような役割を果たしたとも言える。
しかし、週末になって、冷静さを取り戻した市場関係者たちの声を聴く限り、FRBが金融引き締め策の強化を思いとどまる可能性はあまりないという。
事態は緊迫したままであり、遠からず、円相場は次の節目とされる1ドル=135円台を伺う動きを再開してもおかしくない。
「皆もう驚きを通り越して、呆れています。黒田さんにしてみれば、デフレ経済からの脱却に長年拘ってきたにもかかわらず、起きているのは悪い円安だ。一向に成果が上がらない中、残された任期もわずかとなり、もはや引っ込みがつかないということなんでしょう」――。
先週木曜日(4月28日)の金融政策決定会合後の記者会見での黒田総裁の発言を、こう評したのは、筆者の取材に応じた外資系証券会社の幹部である。