創業6年で日本一のりんご農家に

西成 総務省のレポートでは、引退などによりIT人材が45万人不足する「2025年の崖」が示されています。この崖を乗り越えなければ、「最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と指摘されています。「何年までにこうやる」とビジョンを決めて、じわじわと対策を周知していくような国のリーダーシップが必要だと感じます。とはいえ、日本は外圧がかかってから一気に動き出す傾向がありますよね。安定しているという意識の中では、なかなか変革が難しい……。

 

守屋 経済が安定していた「昭和の奇跡」にしがみついて、今日の延長線上に明日を過ごすことが幸せだという成功体験があると、変えていくことが難しくなってしまうのでしょうね。その意識が前提にあると、減点法で物事を考えてしまいます。しかし、これだけ混迷している時代であれば、加点法でなければ立ち行きません。減点法の価値観ではリスクを取りませんから、投資は生まれてこないんです。たとえば、日本とアメリカのスタートアップへの総投資額を比べると50分の1程度なんです。アメリカの方が盛んだというイメージはあると思いますが、わずか2%だということには驚きませんか。

西成 そうですよね。アメリカはリスク取ることが当たり前ですが、日本は安全地帯にいたがります。ケネディ大統領が月に行くと言い出した時、みんなひっくり返ったわけですよ。「何を突拍子もないことを!」って。実際に、最初の頃は打ち上げに失敗して死者まで出ました。失敗してもやめないところがアメリカだともいえますね。日本では一度失敗しただけでもうダメになることが多いですから。壮大な目標を、膨大な国家予算を投資して、アメリカはやってのけたわけです。その結果、波及効果を含めると、現在とんでもない額を回収しています。失敗のリスクへの意識がもう少しブレークスルーすると、ベンチャーも元気になり、投資額も増えていくのではないかと思っています。まさにこれが最近よく聞く「ミッション・エコノミー」です。

守屋 はい、投資をすれば、これまで不可能だと思われていたこともきちんとできるようになるんです。たとえば、日本の農業は、戦後から小さな農家がたくさんあり、農協がそれを束ねるという構図が継続し非効率の塊でした。僕が参画している農業のスタートアップは、創業して6年で年間で480トンのりんごを作り、日本最大のりんご農家となりました。2位は300トンですから、比較するとかなり大規模なことがわかっていただけますよね。これは農業という戦後から変わっていない業態に対して、投資をすることで飛躍することができるという一例だったりします。

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