皆必要だとわかっているのに、なぜ日本のデジタル化は「渋滞」するのか?

新規事業家と渋滞学の専門家が語る(前編)
新型コロナウイルス対策で多くの人が実感したのは、「日本のデジタル化はかなり遅れているのではないか?」ということだろう。ワクチン接種の遅滞や接触確認アプリの不具合などでは少なからぬ不安を残したし、早稲田大学が1月に発表した「世界デジタル政府ランキング2021」(第16回)で日本は9位と健闘しているものの前年に比べて2ランクのダウン。岸田文雄首相が「新しい資本主義の成長のエンジン」の一つとして「デジタル化」を掲げるものの、それを担うデジタル庁は、昨年9月の設立から半年も経たないうちに組織内の軋轢が報道されている。DXでは多くのスタートアップが事業を興しているが、行政・大企業との間にはミゾがある。
多くの当事者がデジタル化の必要性を強く認識し、技術も組織もできているのに、なぜ日本のデジタル化は思うように進まないのか。これを「渋滞」と捉えると解決法が見えてくるのではないか。そこで「渋滞学」を生み出した西成活裕東京大学先端科学技術研究センター教授と、DXスタートアップのプロである新規事業家の守屋実氏に対談していただいた。2回にわたって公開しよう。

DXの渋滞はなぜ起こる?

守屋 西成さんが研究をしている「渋滞学」は大変おもしろいですね。西成さんは、高速道路で起きる自然渋滞のメカニズムを数学的に解いて、「バイパス新設といった大技を使う必要はない」ということを証明して見せてくれる。こうしたことから、渋滞学とは、自動車渋滞に限らず、意志で動くものが滞っている状況を分析する学問だと私は理解しました。拙著『起業は意志が10割』で書いた通り、起業や新規事業は自らの意志で動く典型。だからこそ、渋滞学の視点は非常に参考になると思ったんです。「流れの滞る」原因は何か、つまり事業が止まってしまう要因を紐解く視点として参考にしたい視点です。

西成 ありがとうございます! 今でいうと、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は「渋滞」が起きていますよね。混乱していたり、中には逆走していたりする。

守屋 コロナ禍となり、DXが5年間くらい一気にジャンプするだろうと踏んでいました。たしかにスタートアップではどんどん推進しているのですが、大企業や行政では相変わらず進んでいないという印象です。

西成 アナログとデジタルが入り混じり混沌としている印象もありますよね。たとえば、電子書類の伝票を受けるのがFAXで、その内容をExcelで打ち込んで、それを印刷して誰かに渡して……といった現場に遭遇することがあります。守屋さんも、DXが「渋滞」していると感じたことはありますか?

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守屋 最近、象徴的な出来事があったんです。大企業A社の新規事業開発室と業務委託契約を結ぶことになり、電子サインを求められたんです。しかし、電子サインの申請書を紙で交わすというんです。その紙の申請書に守屋実事務所の印鑑を押すのですが、その印鑑の「印鑑証明書の原本も提出せよ」といわれたんです。

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