食生活に新たなリスク! 温暖化で日本の海に広がる「有毒魚」の正体

加熱しても残る毒、流通していた実例も

地球温暖化が進む将来、日本の海では「有毒魚」の分布が拡大するおそれがある──。

北海道大学の研究チームが2022年1月、最新のシミュレーション研究の結果を論文にまとめた。これらの魚を間違って食べると、健康を害したり、場合によっては命を落としたりする可能性もあるという。海水温が高まるにつれて北の海へ広がる「招かれざる客」とは、いったいどんな魚たちなのか?

自宅で調理した魚で中毒死

長崎県で2012年、漁獲した魚を自宅で調理して食べた70代の男性が中毒死した。原因は、ブダイ科のアオブダイ(Scarus ovifrons)という魚だった。

この男性は、アオブダイを刺身や煮付けにして食べたが、数時間後に体の痛みを訴えて病院を受診した。その後、意識不明になり、翌日に息を引き取った。

アオブダイは頭部にコブ状の突起があり、歯は鳥のくちばしのような形をしている。大きな個体は全長が70cmを超す。

ブダイ科には食用になる種類の魚も多いが、アオブダイは体内に非常に強い毒をもっていることがあり、食べるのは危険だ。

アオブダイの毒の主成分は、「パリトキシン様毒」とされる。刺胞(しほう)動物のスナギンチャク類から発見された猛毒「パリトキシン」(palytoxin)に似た物質だ。

【写真】アオブダイアオブダイ。頭部がコブ状に張り出している(山本智之撮影)

加熱しても残る毒

やっかいなことに、この毒は調理の際に加熱しても消えることがない。

ちなみに沖縄県では、ブダイ科の魚が「イラブチャー」と総称され、ナンヨウブダイ(Chlorurus microrhinos)やイロブダイ(Cetoscarus ocellatus)など、複数の魚種が食用になっている。そして、沖縄県内の市場や店頭では、「青ブダイ」という呼び名の魚が売られていることがある。

しかし、沖縄県衛生環境研究所によると、沖縄で流通する通称「青ブダイ」は、実際には青い色をしたナンヨウブダイなどのことだという。同じ名前でよばれることがあっても、食中毒が問題となっているアオブダイ(Scarus ovifrons)とは別種の魚であることを知っておきたい。

九州・四国が被害の中心だったが…

アオブダイのおもな有毒部位は肝臓だが、筋肉にも毒が存在する場合があり、注意が必要だ。

食中毒を起こすと、激しい筋肉痛に見舞われるのが特徴で、呼吸困難や歩行困難、けいれんをともなうこともある。

2015年には、宮崎県でアオブダイの煮付けを食べた70代の女性が死亡している。2020年には鹿児島県で、知人が釣ったアオブダイを食べた80代の夫婦が、筋肉痛や呼吸困難などの症状を訴えて入院する事態があった。

【表】アオブダイによる食中毒の事例アオブダイによる食中毒の事例(1990年代以降。厚生労働省の資料から抜粋)

厚生労働省の資料によると、アオブダイによる食中毒は1953~2020年に30件近く発生し、計7人が死亡している。これらの事例がどの都道府県で発生しているかを調べてみると、じつはそのほとんどが九州・四国地方に集中していることがわかる。

1990年代以降だけをみても、発生が記録された15件のうち、13件が九州・四国地方だった。

これは、アオブダイが現在、おもに西日本に多く生息していることが原因と考えられる。しかし、温暖化が今後さらに進んでいけば、話は別だ。

海水温の上昇にともなって、アオブダイの生息域が従来よりも北の海域へと広がってくるおそれがあるからだ。

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