年を取ると早起きになっていくとよく言われている。NHK文化研究所の2020年度調査によると、朝6時に起きている人の割合は、20代が27%、30代が35%、40代が50%、50代が53%、以下60代58%、70代以上52%となっている。60代と70代以上では微減だが、「年を重ねると早起きになっていく傾向」はあるといえる。

ではそこに認知症が絡んでくるとどうなるのだろう。

「あたしだよ~。にしおかぁ~すみこだよっ」SMの女王様ファッションでの漫談で人気を博していたにしおかすみこさんは、現在認知症の問題に真正面から向き合っている。

「母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。46歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである」

こんな書き出しで連載「ポンコツ一家」が始まったのは2021年9月20日のこと。2020年コロナ禍に実家に帰った時、今までとは違う家の様子と母親の姿に驚愕したことから話は始まった。にしおかさんは実家に暮らすことを決め、麻薬の売人扱いされたり、冷蔵庫でヘドロになった野菜と格闘したり。そして2021年1月には「地域包括支援センター」の存在を知り、初めて連絡もとった。その時にもひと悶着があったことについては、第7回の連載にて詳しくお伝えしている。

2021年9月から始まった連載第1回

にしおかさんの言葉から伝わってくるのは、認知症でも生活は続くという現実。第8回は地域包括支援センターに連絡してからひと月ほど経ったある日の早朝のことからお届けする。

にしおかすみこさん連載「ポンコツ一家」これまでの連載はこちら
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2021日2月、朝5時半

2021年2月。朝5時半過ぎ。自室。
「朝から悪いね、これだけは忘れないうちに言っておこうと思って。大事な話」と母が神妙な面持ちで立っている。

寝ぼけ眼のままベッドから急いで上半身を起こす。
「全然いいよ、どうした?」

「台所のガス、カチカチいって火がつかなくなったんだけど、あれは単1乾電池を取り替えるのよ。故障じゃないの。ママ長年主婦やってきて初めて知ったよ全く。こういうの詳しい人がいるんだよ。いったい誰が教えてくれたと思う?」

クイズ。
「……私」
昨日私がガスコンロの電池交換をした。築20年の家だ。母も過去にしているはずだ。

「え? すみ? え? うへぇぇぇ! そうだったっけ? あらぁ!」

出題者が迷子になっている。
「誰って思ってたの?」

「えー誰か? 忘れた! まさかのすみだったから。もう嫌んなっちゃう、ママいろいろ忘れちゃうから、あんたの頭の引き出し貸して。そこに大事な話全部入れといて」と。

私の? 頭の中の引き出し? を……シェアするの?……想像してみる。物がごちゃごちゃと溢れかえり、途中から閉まらない開かないのガタガタのそれが1個あるだけだ……。
「ねえ」と口にするも、母の姿はなく階段を降りる音が聞こえる。
……ねえ、入れるにしても今のどの辺が大事?……とりあえず、寝る。

ガスコンロは電池が必要なことに最初気づかない人も多い Photo by iStock