「黒字だから問題なし」「無借金だから健全経営」と言う社長が危ない理由

未来への成長にブレーキをかけるPL脳
現在までのおよそ30年間で、アメリカの株価は14倍にもなったのに、日本の株価はゼロ成長。なぜこんなに大きな差がついたのか。その原因の一つは、日本企業で働く人に「ファイナンス」の概念が定着していないことだと、スタートアップ投資家の朝倉祐介氏は力説する。ファイナンスの思考が、なぜ私たちに必要なのか? 朝倉氏の新刊『ゼロからわかるファイナンス思考 働く人と会社の成長戦略』から、そのエッセンスを伝える。日本企業によく見られる問題だと朝倉氏が指摘するのが「PL脳」だ。

PLを良くすることに注力すると、陥る罠

ひょっとしてみなさんも職場でこんなフレーズを耳にしたことはないでしょうか。

「増収増益を果たすことこそが社長の使命だ」
「今期は減益になりそうだからマーケティングコストを削ろう」
「うちは無借金だから健全経営です」
「黒字だから何も問題ありません」

たしかにもっともらしく聞こえる物言いではありますが、これらは会社を成長させるうえで大事な点を見落としたり軽視したりしているが故に発せられがちな典型的フレーズです。

少なからぬ日本企業の経営者たちは「増収増益が大事だ」とPL(損益計算書)を重視する傾向にあります。投資家もまた然りです。したがって、上場会社であれば四半期決算で出す数字が黒字であること、昨年同期よりも高い数字であること、業績予想よりも高い数字であることを目指し、投資家もそれを期待しています。業績予想にちょっとでも届かないと、その会社の株が容赦なく売られるのは、株式市場でおなじみの光景です。会社は投資家のそうした高い期待に応えるべく、PLを少しでも良くすることに全力を注ぎます。

 

こうした会社の経営方針が定着することを、私は「PL脳」と呼んでいます。とにかく売上だ利益だと必死になり、それを目先で最大化することを目的視するような思考態度がPL脳です。

会社を経営するうえで利益を重視するのは大事なことではあります。また、PLは部門単位の目標設定や成果の把握といった管理のうえでは非常に便利なツールです。ただ、PLを絶対視して、そればかりを注視していると、企業価値をかえって損ねることになりかねないのです。では、PL脳の何が問題なのでしょうか。

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