2022.04.30
# 化学反応

汗をエネルギー源として活用!? 新開発のウェアラブルバイオ燃料電池をご紹介 

材料は「紙」と「炭素」と「酵素」

みなさんは普段、汗をかいていますか? 

暑いときや運動時に流れる汗、単なる老廃物……と思いきや、エネルギー源として活用してしまおう! というのが今回ご紹介する研究成果です。

東京理科大の四反田准教授が昨年発表した「和紙に特殊なカーボンで印刷した紙の電池」。和紙を基板材料に汗を利用して発電します。紙の薄さを活かしてウェアラブル型デバイスに活用し、健康管理に役立てるなどいろいろな用途が期待されています。

電池として十分な出力を得るまでの研究過程や、研究室が一丸となった実験の積み重ねなど興味深いお話をたくさんお伺いすることが出来ました。

四反田准教授

材料は紙と炭素と酵素。手軽で大量に作れるバイオ燃料電池に挑む

——先生が開発された和紙を使ったウェアラブル電池とは、どのようなものなのでしょうか。

人の汗中にある乳酸をエネルギーとし、和紙に導電性のカーボンと、多孔性炭素電極をスクリーン印刷した、高出力の薄膜型ウェアラブルバイオ燃料電池アレイです。従来の乳酸バイオ燃料電池に比べ、高い出力を出すことが可能です。

——バイオ燃料電池というと、最近研究が急速に進展している印象です。脱炭素のためのテクノロジーとしても注目が集まっています。

バイオ燃料電池は、酸化還元をする酵素を使って、酵素や微生物が有機物を分解するときのエネルギーを使って発電します。バイオ発電と言うと、クリーンなエネルギーとして期待が大きい一方、微量な電力しか発電できず、他のエネルギーに比べて効率の面で劣るため、なかなか実用化できていませんでした。

しかし、「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」ネットワークにつながる社会、モノのインターネット(Internet of things)が盛んに言われるようになり、また低炭素社会へと世の中が大きく変化していく中で、周りの環境から微小なエネルギーを収穫して電力に変換するエネルギーハーべスティング技術の重要性が認識されるようになり、研究が活発になってきました。バイオ燃料電池においても2000年頃くらいから、さまざまな大学や研究機関が高出力化に向けて盛り上がっていました。

バイオ燃料電池は、微生物を使うものと生体内の酵素を使うものに大きく分けられるのですが、特に私が注力してきたのは生体反応を利用するものです。生体触媒となる酵素を使うことで、体内のいろいろなものを燃料として発電することができます。グルコースオキシダーゼを使うと砂糖を分解して発電できますし、乳酸オキシダーゼを使うと、乳酸を分解して発電できます。

——体の中にあるものを活用した、つまり生体親和性の高い発電技術なのですね。

生体反応を用いたバイオ燃料電池には、大きな2つの流れがあり、一つはペースメーカーのような体内埋込み型で血中グルコースから発電するもの、もう一つは外付け型、いわゆるウェアラブルデバイス用電池です。

——先生はウェアラブルデバイス用バイオ燃料電池について研究してこられているのでしたよね。

私は2006年頃からバイオ燃料電池の研究を始めています。ウェアラブルデバイスがはやり始めたのは2011年くらいです。身体に装着してリアルタイムで状態を把握できる軽くて薄い機器の出現は画期的で、腕に着けてランニングしたりと一般にも普及したのは、ぐっとハードの省電力化が進んだからですね。一方でバイオ燃料電池の研究も進展し、出力が上がってきていたので、両者が合わさって実用化のめどがたってきました。

——今回、どうして汗と和紙なのですか?

2013年頃から印刷を使ったさまざまなバイオセンサーデバイスの研究をしてきました。

介護やスポーツ分野向けのものを開発したいと考えていて、あるときおむつセンサーの研究を見かけました。尿糖値で血糖値を測定し、オムツの変え時も分かる。使い捨て前提なので、センサーを動かす電力は、貴金属を使わないバイオ燃料電池が適しています。紙なら安いし、紙と炭素と酵素という組み合わせなら廃棄も簡単なので、おむつ以外にも用途があるぞと。紙の中でも通気性と吸水性に優れた和紙がよいだろうと、たくさんの和紙を集めて紙の電池を作り始めました。今回の汗の発電装置とは別に、理化学研究所や筑波大、計測機器メーカーさんと共同で、「尿で発電するおむつ電池」のシステムも作っています。

——紙の電池の仕組みを教えてください。

構造は、基盤となる和紙の空気に触れる方に撥水コーティングを施し、スクリーン印刷で電極を接続するための導電性のカーボン、その上に多孔性炭素電極を印刷します。さらに隣り合う炭素電極上に酸素を還元する酵素・ビリルビンオキシダーゼ、乳酸を酸化する酵素・乳酸オキシダーゼをそれぞれ固定化して正極・負極を作ります。その上に身体に触れる方の基盤として和紙を重ねています。和紙が汗に濡れて内部に浸透していくことで、乳酸を取り込むことができます。

画像提供:四反田先生

——どのくらいの出力なのですか。

アレイ(配列)では1組の正極・負極を直列方向×並列方向で1組とし、最大6組並べる構造としました。1×1、16×1、4×4、6×6の電極アレイで実験したところ、それぞれ0.113 mW、0.511 mW、2.55 mW、4.30 mWの出力が得られました。これまで報告されている薄膜型バイオ燃料電池よりも高い出力で、またアレイ数に比例するように出力が増すことを確認しました。6×6にすると1×1のときの38倍にもなります。また、得られる出力を元に、乳酸濃度の測定も可能です。

——具体的にはどんなものが動く電力量ですか?

6×6の電極アレイでは、歩数などを測る活動量計を1.5時間作動させられました。また回路を設計し、自己発電型ウェアラブル乳酸センシング・デバイスを作成してみました。Bluetoothでスマートフォンと通信し、汗で乳酸濃度をモニタリングできることも確認しています。乳酸濃度が高くなると得られる出力が線形に増加するんです。

——発電にはどれくらい汗をかかないといけないのですか?

発電をするには1分あたり数十マイクロリットル、しっとり濡れるほどの発汗が必要なので、暑熱下のスポーツ時の利用を想定しています。

実は最近、汗中乳酸濃度と血中乳酸濃度には強い相関関係があることがわかり、運動強度を管理するために汗中乳酸のリアルタイム検出に関心が高まっています。乳酸値が上がっているのでトレーニングのしすぎだよ、熱中症になりかけているよとか運動中にわかるデバイスを開発したいですね。ナトリウムイオンをセンシングして休息のタイミングをお知らせするとか、トレーニングにおける新しいモニタリングシステムを開発して、安く大量に作って普及させるのが目標です。

——運動中の汗で発電もトレーニング管理もできるなんてよいですね!

画像提供:四反田先生

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