「江口のりこさんに聞く“レッテル”との付き合い方」
 このように書かれている「江口のりこさん取材依頼書」の仮タイトルを見て、江口さんはこう言った。

「レッテルを貼るってこと、あるんですか? それで苦しむということが、私にはよくわからないんですけど」

編集部で想定していた取材のテーマは根本から覆った。

江口さんは「レッテルを貼る」行為そのものに、ピンと来ないという。江口さんご自身が「レッテルを貼る・貼られる」という行為からとても遠い場所にいることを表している発言といえるだろう。

そんな江口さんが“姥捨て山”という「レッテル」を貼られた部署で働く女性を演じるのが、4月14日から始まった水曜ドラマ『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ系10時~)である。インタビューをすると、江口さん本人と「レッテル」との大きな隔たりが明確に見えてきた。

撮影/山本倫子
江口のりこ(えぐち・のりこ)
1980年、兵庫県生まれ。99年に劇団東京乾電池の研究生となり、2000年に入団。映画『金融破滅日本 桃源郷の人々』でスクリーンデビュー。04年『月とチェリー』で映画初主演を果たす。『半沢直樹』『その女、ジルバ』『俺の家の話』『ソロ活女子のススメ』『時効警察』など数々のドラマにも出演。4月13日からのドラマ『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』で峰岸雪を演じる。出演映画『ツユクサ』は4月29日公開。
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「あなた、出世したくない?」

ドラマの原作は1988年から1997年まで「BE・LOVE」で連載されていた深見じゅんさんによる漫画。1992年4月には石田ひかりさんの主演で放送された同作が、今田美桜さん主演で、30年ぶりに再びドラマ化されることになった。

江口さんが演じるのは、今田さん演じるヒロイン、田中麻理鈴(マリリン)の謎の先輩上司・峰岸雪だ。三流の大学を四流の成績で卒業した麻理鈴は、大手IT企業に就職するものの、超窓際部署に配属される。ポンコツ新入社員と言われながら、目の前のことに全力を尽くす超ポジティブな麻理鈴を、峰岸は、「あなた、出世したくない?」と、会社の最下層から出世する道へと導いていく。

江口さんは言う。

「ちゃきちゃきした麻理鈴は、昭和の少女漫画の王道のキャラターですし、連載当時と今とではたしかに状況が異なります。でも人と人のつながりは、そう変わらないと思うんですよね。麻理鈴は峰岸の言葉をきっかけに出世を目指すことになりますが、峰岸も麻理鈴と出会い、大きな刺激を得ます。お互いに影響を与え、影響を受けあい、上を目指したり、新しいものを作り出したりするという関係性は、昔も今も変わりなく存在していると思います」

「窓際部署」に配属された麻理鈴(今田さん)はそこで峰岸(江口さん)に会い、出世のための100ヵ条を伝授されることに…(c)NTV

周りから、窓際やポンコツなどとレッテルを貼られ、そのことを、しっかり認識しながらも、麻理鈴と峰岸は決して卑屈にはならない。私たちの多くがつい抱いてしまう「どうせ」という感情や、レッテルを超越する存在ともいえる。

「この人はこういう人でという意識を持つ人は少なからず存在しますよね。ずっと窓際部署にいる峰岸も、そういった目で見られることも多いと思います。ただ、自分が望む自分になるのはとても難しいことです。たとえ実現できたとしても、またすぐ別の自分になりたいと思うようになるのではないでしょうか」