ロシアによるウクライナ軍事侵攻が続いている現在、1962年に起きたソ連政府による市民虐殺事件「ノヴォチェルカッスク事件」を忠実に映画化し、第 77回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『親愛なる同志たちへ』が4月8日に公開される。監督は黒澤明とも個人的な親交があり、彼の脚本を元にした『暴走機関車』(1985)でも知られるロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーだ。

『親愛なる同志たちへ』あらすじ
1962年6月1日、ソ連では物価高騰と食糧不足が蔓延していた。共産党市政委員のリューダ(ユリア・ビソツカヤ)は父(セルゲイ・アーリッシュ)と18 歳の娘スヴェッカ(ユリヤ・ブロワ)の3人で穏やかな生活を送っていた。そんななか、ソ連南部ノボチェルカッスクの機関車工場で大規模なストライキが勃発。翌日、街の中心部に集まった約5000 人の市民からなるデモ隊に党は銃や戦車で迎える。デモに参加したスヴェッカが行方不明になっていることを知ったリューダは、デモ参加者を逮捕しているKGBのヴィクトル(アンドレイ・グセフ)とともに党の規律を破り、スヴェッカ探しに奔走する……。
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この映画はウクライナ侵攻が始まる以前の2020年に本国で公開されたものであり、ロシアとウクライナの現状とはまったく関係がない。だが、虐殺が起こった場所はウクライナに近いロシア南部にある都市ノヴォチェルカッスクで、この街はもともとロシア帝国内で自治権をもったドン・コサック(※)の首都であり、ロシア革命後のロシア内戦中はウクライナと統合を求めていた人々も多くいた。

『親愛なる同志たちへ』より
※ドン・コサック……15世紀頃から現在の南東部ウクライナと南西部ロシアに当たるドン川の流域を中心に勢力圏を持った、独自の生活様式をもつ自治的な軍事集団「コサック」の一つ。帝政ロシア時代は自治権を認められる代わりに辺境防備などを担うも、ロシア革命後にソ連政権によって解体された。80〜90年代にコサックの復興運動が起こり、現在も彼らの子孫はノヴォチェルカッスクをはじめとするロシア南部の地域で暮らしている。

ノヴォチェルカッスクはウクライナと非常に近い関係があることから、本作に見るソ連政府による一般市民への虐殺はウクライナ侵攻に重ねて見る人もいるかもしれない。一般市民が逃げ惑い銃撃で倒れていく様子、そして虐殺後、政府が何事もなかったかのようにデモに加わった一般市民を粛々と逮捕して処刑していく様子に戦慄を覚える。ウクライナの現在、そして、これから起こるかもしれない未来を見るようである。

アンドレイ・コンチャロフスキー監督に、本作を制作した理由、そしてロシア映画がヨーロッパの映画祭から排除されている現状への思いについて聞いた。

アンドレイ・コンチャロフスキー監督