【代替水準対比価値】
これまで使用されてきた指標のほとんどは「平均的な選手に比べてどれだけ得点を増減させたか」というコンセプトで作成されたものであるが、WARは「代替水準の選手と比較してどれだけ勝利に貢献したか」を測るものなので、ここまで求めてきた当該選手の評価が、代替水準の選手とどれだけの差になるかの補正を行う必要がある。
その補正の計算方法は以下の通りである。
570×RPW/MLB打席数合計×当該選手の打席数
第1項の570の意味するところは、まずMLBの総試合数2430試合でのWAR合計が1000に相当し、野手のWARの合計はそのうちの57%を占めるということがわかっているので、それを係数としたものである。
そこに1勝を増やすために必要な得点数を示すRPWをリーグ打席数で割ったものをかけ、さらに当該選手の打席数をかけることで、代替レベルの選手との差とする。
RPWはピタゴラス勝率により10とし、これを用いて大谷の代替水準対比価値を求めると20.0となり、それによる大谷の野手としての評価は「51.1」となる。
代替水準対比価値
570×10/181817×639=20.0
大谷の野手としての評価
40.4+2.5+0.1-13.7+1.7+20.0=51.1
つまり大谷は代替レベルの選手と比較して51.1点の上積みをしたと評価される。それをRPWで割った5.1が、大谷の野手としてのWARであり、大谷が野手として5.1勝分の貢献をしたことを意味している。
アメリカンリーグの「FanGraphs」版WARのランキングを見ると、
- 1位 ブラディミール・ゲレーロJr. 6.7
- 2位 マーカス・セミエン 6.6
- 3位 ホセ・ラミレス 6.3
- 4位 カルロス・コレア 5.8
- 5位 アーロン・ジャッジ 5.5
- ……
- 10位 大谷翔平 5.1
と、大谷の野手としてのWARはリーグ10位であり、これだけではリーグで最も貢献したと評価するには厳しかっただろう。

しかし、2021年の大谷は、投手としての貢献も大いにあったのである。
<後編>では、大谷翔平の投手としての能力を見ていくことにしよう。
後編は、こちら(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94124)で4月17日に公開!
本記事は講談社ブルーバックス『統計学が見つけた野球の真理』を再構成してお届けしました。
SP対談、第1弾に続き、第2弾公開開始!
【この奪三振率は脅威的!!】データ分析から『