大谷翔平のすごさを最新統計手法で分析する〈前編〉

MVP獲得が妥当だった理由

二刀流はセイバーメトリクスで評価できるのか?

2021年のMLB アメリカンリーグでMVP(MostValuable Player)に輝いたのは、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)であった。

リーグのMVPは、全米野球記者協会(Baseball Writers Association of America、BBWAA)から選出された30人の記者の投票によって決まるのだが、大谷には30人すべての記者が1位票を投じ、いわゆる「満票」でMVPに選ばれたのである。

【写真】大谷翔平選手大谷翔平選手 photo by gettyimages

大谷の打者としての成績は、本塁打が46本で、これはブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)とサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)の48本に次ぐ3位であり、OPS(Onbase Plus Slugging:打者を評価する指標)はゲレーロJr.の1.002に次ぐ .965で2位である。

ただ打率 .257はリーグ45位と凡庸であるし、打点100はリーグ13位で、打撃部門でリーグ1位となる成績はない。しかも所属するエンゼルスはシーズンを通じて一度も優勝争いに加わっておらず、リーグ西地区4位と低迷しているチームである。

そのような状況であっても、大谷が満票でのMVPを獲得したのは、チームの先発ローテーションの一員として9勝をあげるなど、投手としての功績も大きく、MLBに与
えたインプレッションがとても大きかったからだといえるだろう。

しかし、大谷はインプレッションだけでなく確実にチームの勝利に大きな貢献をしたことが、セイバーメトリクスの観点からも証明されている。この記事で後述する総合指標「WAR」(Wins Above Replacement)に基づけば、大谷がいかに他のタイトルホルダーの打者よりも価値の高い選手であるかがわかり、選出に携わる記者も実際に、それを裏づけとして投票していると考えられるのである。

疑問を感じる日本のMVP選出

翻って、日本でのMVP選考はどうだろう。NPBでは、優勝チームからMVPが選出されることが多い。それはNPBで1962年まで制定されていた「最高殊勲選手」の選
考基準に、「原則として優勝チームから選出」という条項が設定されていたことの影響によるものだろう。1963年に「最優秀選手」というタイトルに改められた際に、その条項は削除されたが、それ以降も優勝チームから選出される傾向にある。

2021年も、パ・リーグでは山本由伸(バファローズ)、セ・リーグでは村上宗隆(スワローズ)の両選手が選出された。両者ともリーグ優勝を果たしたチームの主力選手である。

では実際、この両者を上回る活躍をした選手はいなかったのだろうか。

たとえば、リーグ4位に終わったカープの鈴木誠也のOPSは村上を上回っている。話は古くなるが2016年にカープが優勝した際、MVPに新井貴浩が選出されているが、このときの新井のOPSは0.857でリーグ8位、しかも同じチームにOPS1.015の鈴木誠也や0.870の丸佳浩もいたし、投手では16勝の野村祐輔や15勝のクリス・ジョンソンもいたのである。

「最優秀選手」に輝いた村上宗隆選手(ヤクルト)を上回るOPSを記録していた鈴木誠也選手(現・シカゴ・カブス) photo by gettyimages

「最優秀選手」が「リーグで最も活躍した選手」であるという定義に基づけば、日本の記者投票による選出法にはいくばくかの疑問が残るケースが多々ある。

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