2022.04.18

今年登場する新しい数え方「クエタ」や「ロント」は誰がどう決めた?

候補が限定される厳しい命名条件とは?

31年ぶりの"新人"

前回の記事「ギガより大きい1クエタ、ナノより小さい1クエクトは何桁の数字?」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/93180)でご紹介したように、今年、2022年は、「大きな数」と「小さな数」を表す言葉がそれぞれ2つずつ、計4つが新たに加えられる予定です。

「ゼタ」や「ヨタ」、「ゼプト」や「ヨクト」が追加された前回から、31年ぶりのことです。

新たに加わる4つとは、大きな数では10の30乗を示す「クエタ(quetta)」と10の27乗を示す「ロナ(ronna)」、小さな数では10のマイナス27乗を表す「ロント(ronto)」と10のマイナス30乗を示す「クエクト(quecto)」です。

今回は、国際単位系において桁数を表すこれらの「接頭語」が、どのようなプロセスを経て決められるのかについて、さらに詳しくご紹介します。

「4年に一度」の重要な会議

メートル条約では通常、4年に1回、総会を開きます。単位(国際単位系)に関わる重要な決議はすべて、この総会に諮られます。

その原案はまず、メートル条約傘下の諮問委員会で検討されます。諮問委員会は、「長さ」「質量」「温度」など、計測対象別に置かれていて、委員はメートル条約に加盟する各国の代表から構成されます(日本からは、おもに産業技術総合研究所と情報通信研究機構の専門家が代表を務めています)。

現在は11の諮問委員会が置かれ、これまでに長さの定義が光の速さに置き換えられたり、質量の定義がプランク定数に置き換えられたりしてきた際も、最初にこれら専門家による検討を経ています(質量の定義改定については、〈キログラムの定義が変わる、そのとき何が起こるのか?〉https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55228を参照してください)。

【図】メートル条約の組織概要メートル条約の組織概要

「徹底的に科学的」な議論

「諮問委員会」「加盟国代表」「審議」などの硬い言葉を聞くと、どこか閉鎖的な印象を受けるかもしれません。しかし、その議論は公開された論文に基づく、徹底的に科学的エビデンスに則ったものです。

議論の材料はすべて科学的な裏付けに基づくものであり、その審議にはメンバーシップ(加盟国)の代表が等しく関わり、得られた結論はみなが尊重する──。民主的なプロセスが、ここにも根付いているのです。

とはいえ、そこは専門家どうし、時には昼食も忘れて議論が沸騰することもあるようです。「自分たちの審議結果が、こんどは他の科学者の検証にさらされる」と思えば、議論に熱が入るのも当然でしょう。

【写真】議論が沸騰することもある議論が沸騰することもあるという photo by gettyimages

接頭語の場合、その審議は「単位諮問委員会」とよばれる委員会で議論されます。この委員会は、特定の量に関わらない、接頭語のような横断的な課題を議論するためのものです。

ただし、通常の委員会が加盟各国の専門家からなるのに対し、「単位諮問委員会」は各国の委員だけでなく、国際純粋応用物理学連合(International Union of Pure and Applied Physics: IUPAP)や国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry: IUPAC)などの学術機関、ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)などの国際標準化団体の代表者も委員を構成しています。

各学術機関による横断的視点や、標準化など社会受容性の観点からも検討をおこなうためです。

このようにさまざまな代表者からなる委員会での議論を経て、単位の名称や接頭語の原案がメートル条約総会に諮られることになります。いわば「単位諮問委員会」が、接頭語の名付け親ということになります。

それでは今年、31年ぶりに新しい接頭語が加えられるのは、なぜなのでしょうか?

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