定年制度が日本をダメにした…元ソニーCEO・出井伸之がそう断言する理由

幸せに働くにはどうすればいいか

2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳まで定年が延長された。しかし、そのことは働く人たちを幸せにするのだろうか。元ソニーCEOで84歳になった今もベンチャー企業・クオンタムリープのCEOを務める出井伸之氏は、定年制度そのものに疑問を呈する。

ソニーで学び、自ら切り開いた後半生のキャリア論を綴った新著『人生の経営』(小学館新書)から抜粋する。

出井伸之氏
 

定年をなくしたらどうなるか?

少子高齢化が進む日本では、労働力が不足し、高齢者と女性を活用しようという議論があるのは確かです。しかし、70歳への定年延長は、政府とサラリーマンとの馴れ合いといいますか、年金受給の開始年齢を引き延ばしたい政府と、なんとか会社にしがみついて安定した生活を送りたいサラリーマンとの“談合”のようにも見えます。

問題は、現役サラリーマンの既得権を守るために、その負担を企業に押し付けただけでなく、“談合”から弾かれて割を食ったのが若者たちであることです。

非正規雇用でしか働けない若者がどんどん増え、結婚することも家庭を持つこともできなくなっているというのは、由々しき事態です。高齢者と女性を活用するのも大事ですが、若者にも仕事の経験を積むチャンスを与えなければ、日本の将来はますます暗いものになるでしょう。自分たちはもう生きていないからどうでもいいというのは、あまりに無責任すぎます。

だから、僕は定年延長には反対です。延長するのではなく、むしろ定年という制度を廃止すべきと考えています。

では、定年をなくしたら、どういう雇用スタイルになるのでしょうか。

たとえば、オランダに本社を置くフィリップスという会社があります。ソニーがCDなど光ディスク媒体を共同で開発した会社です。

当時のフィリップスでは、どんなに優秀な技術者であっても、どんなに優秀な営業担当者であっても、契約期間はある年齢から5年間と定められていました。5年の契約期間が終わると、個々の社員の仕事を評価して、再契約するかどうかを決めます。給与が上がって、さらに5年間、再契約される人もいれば、再契約されずに仕事を失う人もいます。フィリップスは特別厳しいというわけではなく、欧米ではこういう雇用契約が一般的です。

では、社員は皆、クビになるのを恐れてびくびくしながら働いているのかというと、決してそんなことはありません。

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