在日ウクライナ人の撮影を3月頭に決断

「今まで表参道駅のコンコースで何度か写真展を行ってきました。すべて心に残る撮影でしたが、ここまで被写体の方の感情がレンズ越しにも伝わってくる現場は初めてでした」と語るのは、フォトグラファーの宮本直孝さんだ。

4月4日から10日までの1週間、東京メトロ・表参道駅のコンコースで、日本で暮らすウクライナ人23名のポートレート写真展『STAND WITH UKRAINE』を行う。

写真/宮本直孝
写真/宮本直孝

宮本さんは過去にも、この表参道のコンコースで、意欲的な写真展を行ってきた。2012年には、ロンドン・パラリンピックに合わせて、パラ・アスリートたちを被写体に撮影を行った。2016年は、日本に暮らす難民たちにフォーカスして『難民はここ(日本)にいます』といううメッセージを発信した。2017年はダウン症の子どもとその母親それぞれのポートレートを並べた『母の日』の写真展、2019年はアザやアルビノなど外見になにがしかの症状を抱える人の夫婦像を『いい夫婦の日』写真展で、2020年はコロナ禍で奮闘する医療従事者のポートレートに「ありがとう、がんばろう。」という短いメッセージを添えて展示を行った。どの展示も多くの人が足を止め、知り得なかった現状と向き合ったり、考えるきっかけとなるものだった。

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こういった展示はすべて会場費、交渉から撮影まですべて宮本さんひとりで行っている。まさに手弁当。労力と費用も相当かかるのになぜ続けるのか、と聞くと宮本さんは毎回、「後でやればよかったと後悔したくないから」と飄々とした表情で答える。

宮本さんは、1990~1991年に世界的な社会派写真家オリビエーロ・トスカーニ氏のもとで教えを受けている。トスカーニ氏は、1983年から2000年までの間、ユナイテッド カラーズ オブ ベネトンの広告写真を手掛け、HIVや人種差別、戦争、死刑制度などそれまで広告ではタブーと言われた題材にチャレンジし、話題を集めた。商業写真を撮影しながらそういったテーマに挑むトスカーニ氏のスピリッツが宮本さんにも引き継がれていったに違いない。

そして今回の撮影は、なんと立案が3月4日とギリギリのスケジュールでスタートした。在日ウクライナ人のつてもないまま、FacebookなどのSNSを頼りに、いくつかのウクライナ人のコミュニティーに、撮影を企画していることを発信した。しかし、いつまで経っても誰からも連絡がない。もう撮影は不可能かも……と思った頃、NGO団体経由で在日ウクライナ大使館につながった。数日すると、ぜひ撮影に協力したいというひとりの女性が旗振りとなって、そこから一気に撮影候補の方が決まっていった。撮影の最終決定が出たのは、3月21日。そこから、23~25日の3日間で、23人のウクライナ人の撮影が始まったのだ。