百家争鳴、ウクライナ戦争は中国にとって「漁夫の利」か「困惑」か

はかりかねる台湾併合への影響

ロシア・ウクライナは中台を連想させる

ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月余りが経過した。核大国による隣国への侵略戦争は、世界的な非難・憂慮を集めているが、中国にとってこの戦争は、別の意味で非常に注目せざるを得ない。それは、ロシアとウクライナの関係は容易に中台関係を連想させるからである。

by Gettyimages

まず、ロシア・ウクライナ関係と中台関係の類似点を見ていこう。

・大国の側が相対的な意味での小国を武力で威嚇し、政治的譲歩を強要しようとしている
・大国と小国は隣り合っている(中国は台湾を国として認めていないが、「事実上の国家」としての実体を有することに鑑み、ここでは「小国」と記述する)
・大国と小国との間には文化・言語面での近似性がある
・大国は小国を自らの一部に過ぎないと見なしている
・大国は核兵器を持った権威主義体制であり、小国は民主主義体制
・小国は大国との合併に反対し、武力の脅しに対しても投降しない

もちろん、ロシア・ウクライナ関係と中台関係には以下のような相違点も少なくない。

・ウクライナは国家としての幅広い国際承認があるが、台湾には(中国の反対が原因で)同様の国際承認がない
・台湾はウクライナと違って、大国と地続きでない
・台湾は17世紀まではマライ・ポリネシア系原住民の居住地であり、中国本土との歴史的な結びつきは、9世紀にキエフ・ルーシが成立していたロシアとウクライナの間ほど強くはない
・台湾に対してはアメリカが「台湾関係法」などによってその安全保障に強くコミットしている
・台湾はTSMCをはじめとする半導体産業が世界をけん引していて、その経済的重要性も極めて高い

とはいえ、類似点が目立つためにウクライナ戦争から台湾問題を連想する中国人は多く、特にネット上でロシアを応援している中国人は、台湾の武力統一を念頭に置いているのは間違いない。

 

では、中国の政府当局はこのウクライナ戦争をいったいどう見ているのだろうか。筆者が開戦後のネット上の言論をチェックしてみたところ、「中国にとってのウクライナ戦争」についてはまさに「百家争鳴」というべき諸説紛々の状況であった。

実は中国に関する評論は、以前はもっぱら「チャイナ・ウォッチャー」と呼ばれる中国専門家の仕事であった。ところが中国が改革開放以後の40年余り、そして特にWTO加盟後の20年余りで高度成長を遂げ、世界における存在感がますます高まる中で、最近は「非チャイナ・ウォッチャー」の参入が相次いでいることが、「百家争鳴」の一つの要因と言える。

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