「文句があるなら、かかってこい」世界を敵に回しても、プーチンが戦争を続ける理由

理想主義の終わりの始まり

5回目の停戦交渉が始まったが…

ウクライナの戦争は長期化の様相を呈してきた。3月29日には、イスタンブールで5回目の停戦交渉が開かれたが、具体的な成果はないまま、終わった。戦争の行方は見通せないが、ここまでの段階で「敗北」が明確になった国もある。それは、日本だ。

今回の交渉で、ウクライナは停戦条件を書面で提出する一方、ロシアは首都キエフに対する攻撃の縮小を表明した。一見、交渉が前進したかに見えるが、停戦への期待は盛り上がっていない。実現性が乏しく、言葉と裏腹にロシアは攻撃を緩めてもいないからだ。

複数の米メディアは31日、米当局者の情報を基に「ウラジーミル・プーチン大統領には、戦況が正確に報告されていない」と報じた。側近たちが「大統領に苦戦を正しく伝えれば、粛清されかねない」と自分の身を案じているからだろう。

大統領に正しい情報が伝わっていないとすれば、停戦はますます遠のく。プーチン氏は停戦どころか「誰がオレの足元をすくっているのか」と気が気でないはずだ。

ロシアのプーチン大統領[Photo by gettyimages]
 

最大のネックは「停戦を担保する第3者の不在」である。直接の当事者はロシアとウクライナだが、ウクライナ側には米国と北大西洋条約機構(NATO)が後ろに控えている。本質的には「米ロという核の超大国同士の戦い」とみていい。

そんな巨人同士の戦いを誰が調停し、停戦を保障できるのか。

どちらかが合意を破った場合、保障した国は違反した側を制裁しなければならないが、ロシアや米国を制裁できるような国はない。中国に軍事力はあるが、ウクライナは「ロシアの仲間の中国に保障してもらおう」とは、けっして思わないだろう。

第2次大戦後に国連が創設されたのは、こういう事態を防ぐためだった。だが、今回は国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが侵略したのだから、国連も停戦保障の機能は果たせない。ロシアが拒否権を行使すれば、終わりである。

言い換えれば、今回の戦争は国連の存在理由がなくなるほどの衝撃を与えている。国連だけではない。核戦争を防ぐ役割を担っていたはずの核拡散防止(NPT)体制も同じである。

NPTは「核を保有する米国、英国、フランス、中国、ロシアの5カ国以外は保有するな」という核保有国の特権を認めた不平等条約である。それが通用したのは「5カ国が核で他国を威嚇することはなく、世界の平和と安定に責任を持つ」という暗黙の誓約(条約前文)があったからだ。

ところが今回、ロシアはこれを破った。前提が崩れたのだから、NPTが空文と化すのは避けられない。北朝鮮が2003年にNPTから脱退し、核実験を続けてきたように、NPT体制はかねて実質的に無力化していたが、一層、拍車がかかる形になる。

ロシアは国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)の枠組みからも追放された。ロシア中央銀行の外貨準備は凍結され、最恵国待遇も剥奪された。IMFの役割は、貿易決済ができなくなった国への資金支援だが、ロシアは支援を受けるどころか、自分の外貨さえ使えなくなった。

ようするに、ロシアは国際社会から完全に爪弾きされてしまった。

サンクトペテルブルグの両替所[Photo by gettyimages]
 
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