2022.05.05

年収100万円未満という人も…“あまりに割にあわない”「ピアノ講師」という職の実態

請けた仕事以上の収入が得られない、それでいて要領よく数をこなすこともまた難しい職業……、そうした側面が弁護士という職業にはある。

ピアノ講師も同じだ。弁護士同様、真面目にやればやるほど収益面では割安となる。莫大な収益を得にくい。それでいてその職に就くまでの時間とカネのコストが膨大なところもまた同じだ。

<【前編】ピアノブーム再燃も…「ピアノ講師」という職業が抱える「儲からない」という大問題>では、ピアノ講師と弁護士の共通点について解説した。後編となる本稿では、現場のピアノ講師3名への取材を通して、彼らが抱えている課題や問題意識をみていきたい。

『ピアノの森』より ©一色まこと/講談社
 

大勢の生徒と向き合うことが難しい

「ただ、バイエルのテキストを使って今日はここまで、来週はここ……と、生徒さん、皆さんが順調に進めばそれに越したことはないのでしょう。でも、人を相手しているので、生徒さんひとりひとり、進度も指導法も変わってくるのは当然ですよね」

こう話すのは大阪府内で活動するピアノ講師・A先生(50)だ。自宅でピアノ教室を開業、時にレンタルピアノスタジオでの出張レッスンも請けている。現在、生徒数は大人と子ども合わせて15人という。うち高・大学生を含む大人は5人、子どもは3歳児から中学3年生までが10人という内訳だ。

毎月のレッスン代は月謝制で初心者は7000円、中級者が1万円、上級者が1万円ないし1万2000円である。年間40回のレッスンだ。入会金などは取らないが楽譜代などの実費は徴収する。ごく一般的な個人ピアノ教室のレッスン代だ。

A先生は、記者の「経済畑の原稿を書いている」という自己紹介を受けてか、「月収は推して知るべし」と笑顔を見せた。

「大勢の生徒さんを引き受ければ、その分、収入も増えますよね。でも、生徒さんたちときちんと向き合うとなると、わたしには今くらいの生徒さんの数がちょうどいいんです」

ひとりひとりの生徒の個性に合わせて全力でレッスンする。一日に3人、4人も教えれば、その後は疲労がどっと出るという。やっつけ仕事で数をこなす……ということは、先に述べた弁護士と同じく、音楽家としてのプライドからそれができない。またそうしたことをすれば、それは今の時代、それこそどんな風評に繋がるやわからない。だから全身全霊でのレッスンとなる。

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