2022年に創刊30周年を迎えたマンガ雑誌「Kiss」。そこに2012年から途中2年のお休みを挟んで2020年まで連載され大人気を博したのが、海野つなみさんの『逃げるは恥だが役に立つ』でした。2015年に第39回講談社漫画賞・少女部門を受賞後、2016年の10月から12月に連続ドラマとして放送されて大人気、2021年1月にはスペシャルドラマが放送されました。しかもその後、主演の新垣結衣さんと星野源さんの結婚で、『逃げるは恥だが役に立つ』が現実のものになったと大ニュースになったのはご存知の通りです。

さて、そんな「逃げ恥」をおさえ、「海野つなみ漫画家生活25周年記念お茶会」で「ファンが選ぶいちばん好きな海野作品」第1位に選出された作品があります。それが『デイジー・ラック』。2000年から2001年まで「Kiss」で連載された、30歳を目前とした幼なじみ4人の女性の姿を描いたオムニバスマンガでした。2018年には佐々木希さん主演で連続ドラマ化もされました。

しかし実はこの作品、連載が途中で打ち切りになっていたというのです。その後単行本が2巻まで出て、それが人気投票の1位になり、さらにドラマ化までされたという伝説の漫画なのです。
その後の海野さんの人気作、『回転銀河』『逃げるは恥だが役に立つ』につながることがとてもよくわかる『デイジー・ラック』はどんな魅力があるのか。「Kiss30周年を記念して、「逃げ恥」はもちろん、海野作品を愛するFRaUweb編集長が海野さんにメールインタビューしました。

みなさまの思い出と感想ツイートも是非お寄せください! 「#デイジーラック」「#フラウ漫画部」でお待ちしております!

マンガ/海野つなみ 文/FRaUマンガ部

-AD-

執筆のキッカケは「SATC」

――2000年から連載された『デイジー・ラック』は、既婚者でパートをしているえみ、鞄職人のミチル、パン職人を目指す楓、エステシャンの薫。小5で同じクラスになったアラサーで、「ひなぎく会」を結成した4人の女性たちを描いたオムニバスマンガです。仕事や恋、結婚など身近な問題にあせったり不安を感じたり、揺れ動く女性たちのリアルな感情が伝わってきます。実は執筆のきっかけは『セックス・アンド・ザ・シティ』だったとか。もう少し詳しく作品誕生までの経緯を教えていただけますか?

海野 90年代の終わりごろ、ファッション誌のパリやNYの現地トピックのコラムを見ていたら、「今、NYでは女性たちがみんなこのドラマに夢中!」と始まったばかりのSATCが紹介されていたんです。
私ももちろん見たことなかったのですが、載っている写真を見て、全然美人に見えない(失礼)女優さんが主役で30代の女4人の話、しかも大人気、というのに、とてもびっくりしたんです。
当時私はまだ20代の終わりだったのですが、来たるべき30代を目前にして、私も日本で30歳になる女の子4人の話を描いてみよう、とそこから考えました。実際、日本で放送されるようになって見たら、想像していたのと全然違いましたけど……(笑)。

 ――結婚していたりしていなかったり、会社員だったり職人だったり。様々な環境の女性が描かれます。それぞれのキャラクター設定はどのように考えたのでしょうか。

(c)海野つなみ/講談社『デイジー・ラック』より


 
海野 自分の周りの、同い年の友達を思い浮かべながら考えました。
若い頃から夢を持っている子、職をコロコロ変える子、しっかり者のできる子、結婚した子。それぞれ自分に近かったり、周りにこういう子いるよね、といった身近な感じです。
日々を楽しみ、悩み、愚痴ったりしながら毎日頑張っているそういう子たちを、オムニバスで丁寧に描きたいなあと思いました。

(c)海野つなみ/講談社 『デイジー・ラック』より

人生は、自分で楽しいものにしていかなくては

 ――4人のなかで最初に30歳になったミチルが「実際持ってないものはたくさんあるけど、この年なりに得てきたものってちゃんとある」と語ったとき、その言葉に愕然とする楓の姿など、本作は読んでいてドキッとする、思い当たるエピソードがちりばめられています。『逃げるは恥だが役に立つ』などにも通じる言葉が多く、ビリビリくるのは、やはり海野さんが「自立」を描いているからではないでしょうか。海野さんが意識して描きたいと思われたことについておしえてください。
 
海野 大学生の時、みんなが学校とバイトで忙しい中、お金持ちで親からお小遣いをもらっているお嬢様の友達が「みんな忙しくて遊んでくれない、孤独だ、つらい」と本気で悩んでいて。みんなは「あんたもバイトしたらええやん」と言ってたんですけど、ほんとどんな人でも悩みはあるし、本人にとっては深刻だったりして
でも、誰かに幸せにしてもらおうと思ったところで、当の本人が自分の幸せが何かよくわかってなかったりするんですよね。人生は、自分で楽しいものにしていかなくては、と思いながら描きました。

(c)海野つなみ/講談社『デイジー・ラック』より

――2巻のラストに「20年後」を描いてくださったのがファンの間でも本当に嬉しかったことです。4コマで描かれた理由を教えてください。

2巻の終わりには「その後の4人」がどうなったかが描かれている


 
海野 単純に、4コマだと背景をちゃんと描かなくてもいいから……(笑)。
ひなぎく会のみんなも、読者さんと一緒に年を取って、今もあれこれ言いながら、毎日たくましく生きてるんだと思います。