小説を書いたことのない「失恋バー」の経営者が書いた小説『ホワイトカメリア』が注目を集めている。恵比寿のバーを舞台とし、6人の男女の視点で恋愛が描かれた小説だ。これが登場人物が多く、320ページの長編にもかかわらず、2月8日の発売当初から話題を集め、わずか1ヵ月で5回の重版を決めているのだ。

一体どんな人が執筆し、そしてなぜ多くの人の支持を集めているのか。その謎を紐解くために、これまでインタビューに答えたことのない著者MIYAMUさんとカバー装画と挿絵を担当したyasunaさんにお話を伺った。前編ではMIYAMUさんとyasunaさんのこれまでの経歴を詳しくお伝えした。学生のとき起業し、「ラブグラフ」というサイトを運営していたこと、リクルートに一度就職した後、ラブグラフに戻り、そこで「失恋バープロジェクト」を立ち上げたこと、yasunaさんのイラストが好きで、何かを一緒にやろうとこの作品になったこと……。後編では「響く」言葉はどのように生まれたのかについて、詳しく伺っていく。

MIYAMUさん(写真右)とyasunaさん(同左) 撮影/柏原力
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「女ごころがわかる男になりなさい」

――『ホワイトカメリア』に対する読者からの感想では、「名言の嵐で心臓何個あっても足らん 全部額縁に入れて飾りたい」「めちゃ泣いている!名言過ぎて泣いている!」などと、「心にビリビリ響く言葉」への驚きが多く見られます。たしかに6人の登場人物の会話もウィットに飛んでいて、「わ、本質をついている!」「こんな気の利いた言葉を言えるなんて!」と感じるような言葉が多くあります。MIYAMUさんがそんな言葉を生み出すようになったのはどのようなことが影響していると思われますか?

MIYAMU 母の影響を強く受けていると思います。僕は熊本出身なのですが、大学時代に自己分析をした際、「根本にあるのは母親の教育なのでは?」と感じたんですよね。母は7歳くらいの僕に「女ごころがわかる男になりなさい」「ピアノが弾ける男ってカッコイイよ」「ピンクが似合う男になりなさい」と言うような人で。車で送り迎えをしてもらっていたときには、「助手席から母親の顔を見る機会なんか人生でそうそうないから。よく覚えておきなさいね」とも言われました。

どれもちっちゃな頃の出来事ですが、不思議と記憶に残っているんですよね。この母の教えが、僕という人間の基盤になっているのでは、と折に触れて思います。

(c)yasuna/講談社『ホワイトカメリア』より

一方、父親はものすごい本好きで、家には重松清さんや伊坂幸太郎さんをはじめとしたたくさんの本がありました。なかでも父から読むように言われたのは、重松さんの『とんび』。残念ながら当時の僕は小説を読まない子どもで、読んでいたのは星新一さんの『ショートショート』のみ。それでも国語はめちゃくちゃ得意でした。

高校時代にはブログを書くのが流行っていたので、そこでちょっと皮肉を効かせた文章を書いてみたり、地元・熊本のタウン誌で連載を持ったり。なので書くことは好きでしたね。伸び伸びと好きなことを書いて、「面白いね!」と言ってもらえる環境だったのも良かったのだと思います。

卒業後は神戸の大学に進みました。就職で上京したので、僕の言葉は熊本・神戸・標準語のミックスです。