「戦争を避けるにはどうすればよいのか」アインシュタインに対するフロイトの答え

人間社会には権利以前に暴力があった…
講談社学術文庫 プロフィール

人間にとって、根源的なものは暴力である!?

さて、フロイトは、この手紙に対してどのように応えたのだろうか。ここでは、そのさわりの部分を紹介しよう。フロイトは当初、アインシュタインの手紙を受け取って驚いたものの、自分の知るかぎり、推測できるかぎりで、戦争を防ぐにはどうすればよいかを述べようとしている。

権利と権力の関係からあなたは議論をはじめました。私もここから考察をはじめるのがよいと思います。ですが、私としては「権力」という言葉ではなく、「暴力」というもっとむき出しで厳しい言葉を使いたいと考えます。

『ひとはなぜ戦争をするのか』より

 

アインシュタインの問題意識に別の側面から光を当てるように、フロイトは正当にも、暴力の歴史から考察を始めている。

権利(法)と暴力、いまの人たちなら、この二つは正反対のもの、対立するものと見なすのではないでしょうか。けれども、権利と暴力は密接に結びついているのです。権利(法)からはすぐに暴力が出てきて、暴力からはすぐに権利(法)が出てくるのです。

『ひとはなぜ戦争をするのか』より

人類の歴史を見れば、人間にとって暴力がどれほど根源的なものであるかがわかる。こうしてフロイトは、人間の攻撃性を完全に取り除くことはできそうもないという結論を出す。それなら、どうすれば戦争を避けることができるのだろうか。

そこで彼が取り上げるのが、精神分析の欲動理論だ。

人間の欲動には2種類あるという。1つは、保持し統一しようとする欲動。もう1つは、破壊し殺害しようとする欲動だ。「人間がすぐに戦火を交えてしまうのが破壊欲動のなせる業(わざ)だとしたら、その反対の欲動、つまりエロスを呼び覚ませばよい」というのだ。

〔引用文はすべて『ひとはなぜ戦争をするのか』(浅見省吾訳)による〕

【写真】チェコ進出のドイツ軍暴力こそ人の根源なのか? 1938年10月、前月のミュンヘン会談で割譲を認めさせたチェコ・ズデーテン地方に進出するドイツ軍 photo by gettyimages

ひとはなぜ戦争をするのか

【書影】人はなぜ戦争するのか 学術文庫
  • 著:A・アインシュタイン、アルバート S・フロイト
  • 訳:浅見 昇吾
  • 解説:養老 孟司、斎藤 環

宇宙と心、2つの闇に理を見出した2人が、戦争と平和、そして人間の本性について真摯に語り合う。養老孟司氏・斎藤環氏による書きおろし解説収録。

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