3月25日に開幕したプロ野球。盛り上げに一役買っているのが日本ハムファイターズの“BIG BOSS”新庄剛志さんだ。明るく人を惹きつけるアイデアマンで、周囲を巻き込む能力が素晴らしいことは間違いがない。そんな新庄さんの素顔がわかる著書『スリルライフ』(マガジンハウス)には、新庄さんがどのように育ったのかもわかるエピソードが満載だ。

慶應義塾大学医学部小児科教授で、『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』の著者である高橋孝雄先生に、「子育て」という視点から本書を読み解いていただいた。前編では、本書からの抜粋と共に新庄氏の育ち方から学ぶ「子育ち」のヒントについてお伝えした。

後編では、高橋先生が「子どもが幸せになるための原動力」と感じている「3つの力」がなぜ重要なのか、新庄氏の実例とともに具体的にお伝えする。

慶応大学病院で高橋孝雄医師に話を伺った
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意思決定力は「自分で決める力」だけではない

私の著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』でもお伝えしましたが、「子どもが幸せになる原動力は3つある」と考えています。

一つ目が「意志決定力」。と言っても、「自分で決める力」だけではちょっと弱い。もっと大事なのは、自分の考えたことを口に出して言えること。それができるようになるには、自分の言い分に周りの大人や友だちが耳を傾けてくれるかどうかがポイントです。

新庄さんはおそらく子どものころから「ふと思いついたことをそのまま口に出してみちゃう力」を発揮していたのでしょう。そして大人になって、子ども時代から育まれてきた意志決定力を仕事の場でも十分に発揮できているのではないかと思います。それは本の以下のくだりからもわかります。

僕は2022年シーズン、自分の思いついた作戦をどんどん実戦で試してみようと思っている。(『スリルライフ』より)

子どもって、言いたいことがあっても意外とガマンしているものです。「こんなことを言ったら、怒られちゃうだろうな」「自分が言うことなんか、どうせ聞いてくれっこないよ」などと思って、自分で自分の発言にブレーキをかけてしまうのです。加えて親が「これやってみたら?あなたのためよ。あとで後悔したくないでしょ」などと、親自身がこうあって欲しいと思う目標を一方的に押しつけるようだと、なおさら子どもは萎縮します。結果、意志決定力を身につけ、発揮する機会を奪うことになってしまうのです。

開幕戦から投手の起用しかり、注目の策を出している新庄BIG BOSS。『スリルライフ』より

ただし子どもの言い分が通っても、うまくいくかどうかは別問題です。むしろ失敗の連続、挫折体験の積み重ねでしょう。それでいい。「自分の意見が通った。でも失敗した」という経験に意味があるのです。やらせてみる価値はあるのです。

新庄少年も、自分の思いつきを拾ってくれる大人に恵まれていたのでしょう。お父さんはその一人。それでやらせてもらったのはいいけれど、大半がうまくいかなかったはず。でもたまに・・・・・・せいぜい10回に1回くらいうまくいくことがあった。そのときに「言ってみるもんだな」と思う。そんな小さな成功体験を少しずつ積み上げて、どんどん自信をつけていったと思われます。