異国文化や生活体験が大好きで、英語はもちろん、現地語からボディランゲージまで総動員して海外を渡り歩いてきたイラストレーター&エッセイストの森優子さん。さぞ、普段は活動的なスタイルと 思いきや、実は着物愛好家だという。面倒なことはスパッと切り捨て、楽しく合理的に人生を謳歌 する森さんいわく、「着物というツールを手に入れたことで、人生ががぜん面白くなった」。美しく装う、もしくは自国のカルチャーを学ぶ、から一つ先に進んだ「着物のハマり方」とは。森さんの漫画とともに紹介する。

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始まりは 500 円の着付け教室

「1回 500 円。四回通えば着られるようになります!」私がそんな着付け教室の扉をおそるおそる叩いたのは 12 年前。きっかけは、じつにありがちな理由からだった。そう、それは――「タンスに眠っている母や祖母の着物をどうにかしたい!」
母は 20 年前に天国へ旅立った。形見分けの際には「私がちゃんと受け継いで着るからね」と涙ながらに誓った。だが、実際は狭い自宅マンションの収納を圧迫され続けるだけで、8年が経過していたのだ。かくして、ずーっと気になっていた母と祖母の形見を手に、私はようやく重い腰を上げた。
つまり、全国から「あるある」の声が聞こえてきそうなところから、私の着物ライフは始まったのである。

どの家にもありそうな「あるある重圧」。私もここが始まりだった。作画:森優子

500 円×4 回のレッスンで、とりあえず基本を撫でたあとは、教則本やネットを参考に独学・実践。なんとか自力で着て、人前へも出られるようになった。そして現在はと言えば、たまに着物仲間とオホホホとそぞろ歩くのが楽しみな、着物沼の住人の一人となっている。ただし、けっして”正統派”とは言えないことを、先に白状しておかねばならないだろう。買い足す着物・帯はほとんどがリサイクルや吊るしの既製品だし(本来理想とされるのはマイサイズのお誂え)、不器用で紐がまともに結べない上に努力家でもないため、数々の”飛び道具”を使用。着物を語るなんぞ百万年早いことは自覚している。

とはいえ、ここまでの経験からはっきり断言できることがある。それは、着物というツールを得たことで、人生ががぜん面白くなったということだ。そして、「着る」以外にとても多くの人とつながる「楽しみ方」にも出会ったのである。