膠着状態となったウクライナ戦線
ロシアのウクライナ侵攻から1カ月。プーチン大統領が見込んだとされる短期の決着からはほど遠く、消耗戦の様相を強めている。
この軍事侵攻の特徴は、力づくで領土を拡張したり、自国の要求を飲ませたりしたフランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトを彷彿とさせる19世紀型の戦争ということだ。核兵器で脅すのは20世紀の第2次世界大戦の顔が見え、化学兵器をちらつかせるのは第1次世界大戦を連想させる。
いずれにしても「力は正義なり」という帝国主義の発想であり、人間の豊かさを背景に成熟した社会を目指す21世紀の価値観とは相容れない。

米国をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)は第3次世界大戦への警戒感からウクライナへの軍隊派遣を見合せ、武器の提供にとどめる一方、ロシアに対してはSWIFT(国際銀行間通信協会) からのロシア主要銀行の除外やロシア中央銀行の資産凍結といった経済制裁で臨んでいる。
どこまでウクライナのゼレンスキー政権が持ちこたえるか、いつプーチン政権がロシア国民の不満から窮地に追い込まれるか、究極の競争が見え隠れしている。この事態はゼレンスキー大統領が言う通り、プーチン大統領との首脳会談でしか解決しないのかもしれない。
ロシアの軍事作戦は完全に失敗した
ロシア軍の軍事作戦が失敗したのは、間違いない。
ウクライナ北部に隣接する親ロシア国家、ベラルーシとの共同演習「同盟の決意2022」を終え、間髪を入れずに国境を越えたロシア軍は首都キエフまで約90キロメートルという東京-宇都宮間より短い距離にもかかわらず、いまだに到達していない。