2022.03.29
# ライフ

60歳、「きれいでいたい!」と思ううちは美容医療の力を借りる

60歳、ひとりを楽しむ準備(5)
「これが、好き」と言えるものがある人は、いくつになっても若々しい──。エッセイスト・岸本葉子さんはそう実感しています。『60歳、ひとりを楽しむ準備 人生を大切に生きる53のヒント』には、旅や俳句、美容医療、トレーニングほか、岸本さんが出合えてよかったことが失敗談も隠さず綴られています。
その中から​現代ビジネスでは、トレーニング​が苦行でなく、ようやく楽しめるものが見つかった話、都心の名ホテルにまた泊まりたくなったわけ、一生の趣味になった俳句の大きな魅力、78歳の料理研究家から学んだことなどなど、読んで楽しく参考にもなるエッセイを連載で紹介します。

何もケアしなかったときの顔

美容医療に通っている。効果の持続期間とされる半年を過ぎると、なんとなくたるんできたようで、予約を入れる。

「今は予約がとりやすかったです」。込み具合を知りたがっていた知人に報告すると、「僕もそろそろ行かないと」。70代男性で、もとはいぼの治療のため私がクリニックを紹介した。そのときついでに薄くしてもらったしみが、また濃くなってきたからと。

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きっかけは保険適用内の治療でも、いまや美容目的だ。メンズエステの広告に出ているような人では全然なく、髪なんかもふつうに床屋で刈ってもらっていそうな人だ。

クリニックの待合室の面々を見ても、ちょっと(ここがツボ)きれいになりたいって、老若男女の別を問わぬ、普遍的な欲望なのだなと思う。

「私も行かなきゃと思っていたのよ」。同じく紹介した60代女性である。夫と久しぶりのスポーツ観戦に行ったところ中継にちら映りしたらしく、学生時代の親友からすかさずショートメールが来て「すごい老け顔してたよ。その席は映るんだから気を抜いちゃダメ!」。

それは酷。若い頃を知る人に記憶の顔と比べられても……となぐさめようとしたが、本人いわく再放送でチェックしたところ、親友と同じ感想を持ち、次の予約を早めたいと。こうして定期メンテナンスが欠かせなくなっていく。

前に看護師さんと話して、介護脱毛もそこでできると知った。排泄ケアを受ける際、毛のないほうがきれいに拭き取れ皮膚トラブルが起きにくいということに、介護経験者の私はうなずける。黒いものに反応するレーザー脱毛のしくみからして、するなら早いほうがいいとも思う。

にもかかわらずそちらはいまだ検討中。顔のほうだけ定期的に受けている。将来の必要より現在の欲望のほうが、動機づけとして強いらしい。

 

通い続けて5年。その間人工的なことをせず自然に任せていた場合の、本当の自分の顔はどんななのか。いや、その問いは意味を持たない。30代でした歯列矯正も保険外の治療だが、あれをしなかった場合の「本当の自分」なんて考えないし。医療の力を借りて今ある姿が、リアルな私なのだ。

経済状況その他で通えなくなったら? そのときはそのときで、ありのままの私を受け入れよう。

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