何事もネットを調べればすぐに答えを得られるし、直接な人間関係よりSNS上でのつながりのほうが増えてきた。そんなネット空間の世界が広がっている昨今、私たちの悩みの質も、これまでとは根本的に変わってきている……、そんな印象を抱いている人も多いのではないだろうか。悩みの質が変わってきているなら、それに対処する方法も変わる必要がある。しかし私たちは相変わらず、昔ながらのゼロか百かの答えを求め続けている気がする。

このたび、そんな時代のカウンセリングについて綴った本『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』を出版した臨床心理士の東畑開人さんに、SNSとコロナ時代の悩みの向き合い方、そして自分と大切な人たちの心を守る方法を教えてもらった。3回に渡ってお届けするこのシリーズ。第2回は、自分自身の悩みと向き合う方法について詳しく伺った。

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他人は案外「危険」じゃない

――前回は、悩みの質が変化してきているというお話を伺いました。今は“小舟化”といって、誰もが一人で小舟を漕いでいるような時代とおっしゃっていましたが、そんな時代の悩みの解決の仕方ってどういったことが有効なのでしょう?

東畑 ズバリ言うと、「他人を当てにしましょう」です。一人で小舟に乗っているということは、自分であらゆることを管理し対処する必要があるということ。そうすると「他人は自分のペースを乱す危険な存在」と思いがちですが、案外危険じゃない、というのが重要です。

実際頼ってみると、人は意外と何とかしてくれるものです。誰かに頼られるとうれしいですよね。いろいろやってあげようと思うものです。ですが、自分が頼る段になると、迷惑をかけるだけに思ってしまうのが不思議なところです。

撮影:FRaU編集部

――著書では、私たちの心には“理性でコントロールしようとする自分”と“本能で動きたい自分”がいて、その二つが常に押し引きしている、と書かれていました。その本能で動きたい自分は、実は誰かを頼りたがっているということですか?

東畑 僕はこれを馬(本能)とジョッキー(理性)という言葉で表現しました。僕らの心って、ジョッキーが馬を乗りこなそうとして、うまくいったり失敗したりしている状態だと思うんですね。そして、今はほとんどの人がジョッキー過剰になっています。とにかく自分をコントロールしようとし続けているんですね。でも、馬は別のことを考えている。他者に頼って、いろいろとやってもらいたい僕らがいるはずです。そういう自分に気が付けたらと思うんですね。

――上手く気づけたとして、他人を頼るってなかなか重くて勇気がいりますよね。

東畑 確かに(笑)。でもね、「ちょっとお茶飲もうよ」とか「ちょっと話したいんだけど」って雑談の時間を持つのがその一歩だと思うんですけどね。

――でも今の時代、みんな忙しそうなので、中身のないことでなかなか時間を作ってほしいとは言いづらいものがあります。

東畑 何でも管理してコントロールする時代ですから、「話があるんだけど」などと言われたら、「何の議題だ?」と構えてしまいますよね(笑)。僕も昨年後半に、先輩から「年末に話がしたい」という連絡をもらったんですよ。怖いですよね。なんの話なのか分からないのが怖い。それで「何かしたっけな?」とか「いや、でも、本当にヤバいことならわざわざ年末に言ってこないだろう」とか、めちゃくちゃあれこれ考えてしまったんです。で、会ってみたら別にたいした話でもなくて、楽しく過ごして帰ったんですけど。何が言いたいかというと、中身がない時間が怖いということですね。これは明らかに他者への不信感の問題です。