何事もネットを調べればすぐに答えを得られるし、直接な人間関係よりSNS上でのつながりのほうが増えてきた。そんなネット空間の世界が広がっている昨今、私たちの悩みの質も、これまでとは根本的に変わってきている……、そんな印象を抱いている人も多いのではないだろうか。悩みの質が変わってきているなら、それに対処する方法も変わる必要がある。しかし私たちは相変わらず、昔ながらのゼロか百かの答えを求め続けている気がする。

このたび、そんな時代のカウンセリングについて綴った本『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』を出版した臨床心理士の東畑開人さんに、SNSとコロナ時代の悩みの向き合い方、そして自分と大切な人たちの心を守る方法を教えてもらった。今、私たちが気づくべき自分の心の内とは? そして受け入れるべき価値観とは? 3回に渡ってお届けする。

-AD-

“自分探し”から“つながり探し”に悩む時代に

撮影:FRaU編集部

――最新著書のまえがきでは、「この20年、人々を守ってくれるはずの社会の仕組みはガラガラと壊れていきました」と書かれていました。たしかにこれだけSNSが発展して、仕事の仕方も人間関係も大きく変わってきた今。私たちの悩みも変わってきているはずだと思ったのですが、実際にカウンセリングの現場では変化を感じられているのでしょうか?

東畑 かつて日本の臨床心理学の礎を築いた河合隼雄は、「自己実現」というワードを使って、心について語っていました。世間でも「自分探し」とか「本当の自分」みたいなのが流行していました。これが80、90年代までの主流だったと思うんですね。ところが経済的な停滞がはっきりしてきた2000年代過ぎから、自分を考える焦点が変わっていったように思います。

昨今のカウンセリングの現場では、「本当の自分を探す」という相談はあまり聞かれません。むしろ近しい人との関係構築の難しさや、あるいは親密な人が作れない、という問題のほうが切実です。つまり、「本当の自分」から「本当のつながり」へと焦点が変わったように思うんです。