ウクライナ侵攻を予言していた
英王立防衛安全保障研究所(Royal United Services Institute for Defence and Security Studies。通称「RUSI」)というシンクタンクをご存じだろうか――。
何と190年前の1831年に創設された世界最古のシンクタンクである。RUSI本部は首都ロンドンの官庁街ウエストミンスター地区ホワイトホールにあるが、ジョン・ル・カレの一連のスパイ小説でおなじみの首相官邸(ダウニング街10番地)の斜向かいである。
日本での知名度で言えば、英国のシンクタンクは英王立国際問題研究所(Royal Institute of International Affairs。通称「チャタム・ハウス」)が断トツである。しかし、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始後、RUSI関係者のコメントが日本でも紹介されるようになった。

読売新聞(2月26日付朝刊)は、同紙ロンドン特派員のRUSIリサーチアナリスト、ニック・レイノルズ氏インタビュー記事を掲載している。さらに英BBC(英国放送協会)は3月9日配信(日本語版)でジョナサン・ビール防衛担当編集委員の記事中にRUSIリサーチフェロー(空軍力担当)、ジャスティン・ブロンク氏のコメントを引用していた。
では、なぜ本稿でRUSIを取り上げるのか。もちろん、理由がある。ウラジーミル・プーチン露大統領のウクライナ軍事侵攻決断を、実は昨年12月下旬に予測していたロシア問題専門家が世界で唯一人いたのだ。それは、RUSIのシニア・リサーチフェロー、国際部長、そして「RUSI Newsbrief」編集長のジョナサン・アイル氏(Dr Jonathan Eyal)である。