父親が高カロリー食を食べていると、息子の糖尿病リスクが上がる? 遺伝と生活習慣の意外な関係

最新研究から見えてきた遺伝子のはたらき
奥田 昌子 プロフィール

生まれる前にも変化する、遺伝子のスイッチ

妊婦さんの食の好みによって子どもが肥満しやすくなる可能性を示す例を1つあげておきましょう。

妊娠中の母ラットにジャンクフードを食べさせると、お腹にいる赤ちゃんラットの脳にある報酬系の一部の遺伝子が強くオンになります。これにより、子ラットもジャンクフードを食べれば強い快感が得られるようになるため、生まれたのちにジャンクフードを好んで食べ、肥満します(文献4)。

【写真】妊娠中のラットにジャンクフードを食べさせると!?妊娠中の母ラットの食事の影響で、赤ちゃんラットがジャンクフード依存に

やがて、これらの遺伝子がオフになると子ラットはジャンクフードを食べてもあまり快感が得られなくなりますが、そうなると、もっと食べよう、もっと食べようとしてしまい、依存が深まると考えられています。

これまで別々にとらえられがちだった遺伝と生活習慣は、ゲノムならびに遺伝子という舞台で相互に結びつき、病気の「なりやすさ」を作っています。ゲノム生物学という研究分野の進歩により、マウスだけでなく人でもさまざまな事実が明らかになりました。

人間、生命、そして健康の概念が大きく変わるなかで、本書は多数の文献から得られた最新の知見をもとに、私たち日本人がどうすれば健康になれるのかを考えます。

〈参考文献〉

  1. "Male-lineage transmission of an acquired metabolic phenotype induced by grand-paternal obesity", Cropley JE et al., Molecular Metabolism, 5(8), 2016,
  2. "Paternal Exercise Improves Glucose Metabolism in Adult Offspring", Stanford KI et al., Diabetes, 67 (12), 2018, “Placental superoxide dismutase 3 mediates benefits of maternal exercise on offspring health", Kusuyama J et al., Cell Metabolism, 33(5), 2021
  3. "Obesity and Bariatric Surgery Drive Epigenetic Variation of Spermatozoa in Humans", Donkin I et al., Cell Metabolism, 23(2), 2016
  4. 「脂質に対する嗜好性と脳内報酬系エピゲノム」小塚ら, 『 肥満研究』24(2), 2018

本記事は、『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社 ブルーバックス)https://gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065274569から特別編集してお届けしました。

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