2022.03.31
# 立花隆

「知の巨人」立花隆の書棚に写った「殺伐」の正体

蔵書10万冊の書棚を撮り続けた話

作家・評論家・ジャーナリストとして活躍した立花隆さんが急逝してまもなく1年――。10万冊とも言われる膨大な蔵書が収められた立花さんの書棚を1年半にわたって撮影し続け、さらに2年近くをかけて『立花隆の書棚』にまとめた写真家の薈田(わいだ)純一氏が、2022年4月に「追悼 立花隆の書棚展」を開催することになった。その薈田氏が、撮影当時、立花氏の書棚に感じたという「殺伐とした」雰囲気とは、はたして何だったのか――。特別寄稿。

「書棚」には所有者の性格が現れる

私は「書棚」を撮影テーマの一つにしている。正確に言えば「書棚がもつ個性」である。写真家である私にとって理想的な書棚の写真、それは、棚に納まる各本の背表紙、書棚の質感や全体像がリアルに味わえるような一枚だ。さらに、持ち主の癖や性格のようなものまで写せたならば、それはとても上手く撮れた写真ということになる。

日本の推理小説のパイオニア江戸川乱歩の書棚は大きな蔵の中に設えられている。重厚な装丁の洋書が整然と並び、美しい色使いの背表紙が薄暗い蔵の中を鮮やかに彩っている。まるでトロフィーを飾っているかのように、いかに乱歩が創作の源泉としたものを崇めるように扱っていたのがわかる。

江戸川乱歩の書棚(photo 薈田純一)

「書鬼」とよばれた書家・青山杉雨(さんう)の書棚は端然としている。書棚に納まる和書・漢書には背表紙がない。すべての本の小口が整然と正面を向く様相はミニマリズムの書棚と呼ぶにふさわしい。測ったように納まるそれらの書物を見ていると、謹厳かつ有機的な篆書体を好んだ書家のこだわりが見えるようだ。

青山杉雨の書棚(photo 薈田純一) 

知の巨人が持ちだした撮影条件

あるとき、立花隆さんの書棚を撮る機会がやってきた。

莫大な量の多読家・蔵書家で知られ、「知の巨人」とも称された人物の書棚とはいったいどんなものなのかとワクワクしたのも束の間、撮影の条件が「書棚は全部撮ること」だと聞かされてゲンナリしてしまった。

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