2022.03.17

「処罰感情」が暴走する日本社会…「叱る依存」から脱却するにはどうしたらいいか?

「叱る」は効果がない

何かミスをしたあとで延々と叱られた経験や、何かと説教してくる人が身近にいたことはおそらく誰にでもあるだろう。ところが、長々と叱責されても言われた側の学習にはつながらないことが心理学や行動科学ではわかっている。ほとんど意味がないのに叱る人は減るどころか、SNSを覗くと処罰感情を爆発させている人は山ほど見つかる。

「叱る依存」という言葉でこの問題を捉えた『〈叱る依存〉が止まらない』の著者で臨床心理士・公認心理師の村中直人氏に、私たちが「叱る」とどう付き合っていけばいいのかを訊いた。

[PHOTO]iStock
 

叱られても人は学べない

――叱ったところで叱られた側の学習効果は薄いという前提が、世の中では共有されていませんよね。

村中 そうですね。「叱る」、つまり恐怖や苦痛のようなネガティブ感情を利用して相手に変化を起こそうとする関わり方には効果よりもデメリットが多い。これは心理学や行動科学のリテラシーがある研究者や支援者のなかでは反論する人はまずいないくらいの科学的な常識にすでになっています。

「叱ることには効果がない」を少し解説しますと、叱られた人はディフェンス(防御)モードに入ります。神経科学的に表現すれば、叱られるとその人の脳の中で情動などを司る扁桃体を中心とした神経ネットワークが活性化し、身体中に「危険だ」とアラームが出る。

そうなると前頭前野の活動が抑制されて知的能力が下がり、思慮深い行動ができなくなります。しかし、自分の失敗について「どう振る舞えばよかったのか」を検討するには知的能力が必要ですから、叱られてしまった状態で何かを学ぶことは難しいわけです。

「叱る」擁護派の人でも、「弊害がまったくない」と思っている方は少数派でしょう。しかし、効果の方が上回っていると思われている。SNSなどを見ると「『叱る』と『怒る』は違う」とまことしやかに語られています。「怒る」は自分のため、「叱る」は相手のためにするもの、「叱る」と「しつけ」は同じであって叱らないと学べないことは多い、と。この思い込みは間違いです。

「叱る」と「怒る」が違うのは叱る側の感情体験だけで、受け手にとっては叱るも怒るも同じ苦痛であり、学習効果より弊害の方がはるかに大きいのです。

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