裁判所が発表している「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別」によると、令和2年度で家庭裁判所への離婚申立があったのは夫からが15500件、妻側が43469件。妻から申し立てられた動機の1位は「性格が合わない(16304)」2位が「精神的に虐待する(10948)」、3位が「暴力をふるう(8576)」、4位が「異性関係(6505)」である。

上條まゆみさんが山瀬貴幸さん(仮名・45歳)に離婚にいたった話を伺った前編「些細な親子喧嘩から「DV」扱い…54歳男性が離婚せざるを得なかった状況」では、些細な親子喧嘩を機に家を出ることになり、精神的身体的暴力を理由に離婚を請求されたことをお伝えした。まさに理由の2位と3位である。しかし細かく話を聞いていったが、手首を掴んだことが一度あったとはいえ、山瀬さんは暴力をふるったことはないという。それなのに、第三者に訴えなければならないほどのすれ違いはどのように起きてしまったのか。後編で、山瀬さんの振り返りをお伝えする。

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裕福な家庭に生まれた妻

どうしてこんなことになってしまったのだろう。貴幸さんは思いをめぐらせる。

妻は、かわいらしく穏やかな雰囲気の女性だった。いわゆる家事手伝いで、社会経験はなかった。趣味の場で知り合い、ふつうに恋愛し、ふつうに結婚した。
「妻の父親は医者で、裕福な暮らしをしていたので、私が結婚の挨拶に行ったとき『サラリーマンがうちの娘を幸せにできるの』と言われたのには、ちょっと違和感ありました。結婚したら私の親とは絶対に同居しないこと、妻の実家近くに家を建てることを約束させられたのも、いま思えばアレですけど、当時は若かったし、結婚することに舞い上がっていたので、飲み込んでしまいました」

貴幸さんは一人息子。自分の両親に妻の実家の近くに住むことを告げたら、一瞬、寂しそうな顔をした。それでも、息子が幸せならばと、すぐに表情を戻したことが貴幸さんはいまも忘れられないでいる。

結婚して、すぐに子どもを授かった。貴幸さんは仕事に集中し、家事育児は妻まかせ。20年ほど前の夫婦としては、ごく当たり前の役割分担だったと思う。

家のことはすべて妻におまかせ。それが当たり前の時代でもあった(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

やさしかった妻が少しずつ変わっていったのはいつからか。2人目の子どもが生まれたあたりかもしれない。

「妻は、育児のストレスで常にイライラしていました。私はこんなに大変な思いをしているのに、あなたは子どもが泣いても夜、起きないってよく文句を言っていました。私は何も言い返さなかったが、心の中では、昼間、あなたは実家に入り浸っているでしょう、ほかのおうちに比べればずいぶん楽なんじゃないの、と思っていましたね」