2022.03.18
# 年金

年金がカットされるくらいなら「働かない方がマシ」…56歳会社員が陥った「大きな誤解」

山中 伸枝 プロフィール

令和4年4月に改正される「在職老齢年金」

月28万円の基準値は、平均的な老齢厚生年金の月額が9万円だとすると月19万円以下の給与であれば、年金カットが行われない水準となります。給与が20万円だと28万円との差額の2分の1、つまり5,000円の年金カット、給与が25万円だと3万円の年金カットです。

高木さんは、「確かにそれではせっかく働いても意味がありませんね」と大きくうなずいています。年金保険料を長らく負担してきた方たちの当然の権利が侵害されていると考えてしまう方が多いのも仕方がないのかも知れません。

きっと国もそこに対して問題意識をもったのでしょう。令和4年4月からはこの基準値が28万円から47万円に変更されます。つまり高木さんの先輩の例であれば、年金カットの対象とならない給与額が47万円と年金額9万円との差額である38万円まで拡大するのです。

先ほどの話では、給与は27万円ですから、特別支給の老齢厚生年金と合わせても36万円、これは47万円の基準値を下回りますから年金はカットされず全額支給です。

もともと在職老齢年金の基準値28万円は65歳未満の方を対象としたもので、これまでも65歳以上の基準値は47万円でした。高木さんの先輩の例のように、定年以降40万円もの給与を受けていらっしゃる方は少ないというデータもあるので、今後はこの在職老齢年金の影響で年金カットの対象となる方は少なくなるだろうと言われています。

 

では高木さんご本人の年金で考えてみましょう。前述のように高木さんは特別支給の老齢厚生年金を受給できる対象者ではありません。従って、定年以降65歳になるまで嘱託社員として働いたとしても、そもそもカットの対象となる年金がないのですから「働いたら損をする」こともないということになります。

むしろ公的年金の支給は65歳からなので、60歳定年からの5年間、働かないと無収入だということをしっかり認識しなければなりません。年金カットがあった先輩は、働くだけ損だと思ったかも知れませんが、それでも一部であっても年金が受けられたのですから、嘱託社員で働く意味合いも高木さんとは異なります。

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