メディアへの露出とともに…

そして、ある日、「新人のときには順調に成長していると評価されていたのが、3、4年目になって成長曲線から外れている」という評価を申し渡された。帰り道では涙がぽろぽろとこぼれた。毎日夜中まで、いや明方まで働いている。仕事の時間は私の日常をマックスで占領している。成績があがらなければ、もっと時間をかけて勉強した。これ以上、仕事に投入する時間も労力も増やせない現状で、私はいったいどうしたらいいのだろう? 

私の事務所の電話が鳴ったのはちょうどそんな時期だった。大きなプロジェクトが終わった徹夜明けの頭に、低音の、それでいて弾力のある声が心地よく響く。どうやら彼女は雑誌の記者で、いま「天才」を特集しているという。そして、東大新聞に取材された私の記事を見ていて、ぜひ私の話を聴きたいというのだ。だだ下がる自己肯定感になすすべもなかった私は、自分を評価してくれる電話の声の主に自尊心をくすぐられる。

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「はい、だいじょうぶです。伺います」と反射的に答えてから、ふと不穏な予感に胸が騒ぐ。

それがすべてのはじまりだった。雑誌に取り上げられた私は、次には雑誌を見たテレビ局からクイズ番組への依頼が届く。その次は別のテレビ。その次はスポーツ紙。そしてその次は……。

私のメディアへの露出は、エスタブリッシュな法律事務所と次第に衝突するようになる。現在でも、日本のエリートサークルは、大衆メディアをよしとしていない。特に、個人ではなく企業を顧客とする法律事務所にとって、メディアへの露出は品位を傷つけうる。その度に、事務所に許可を取り、そして事務所もよく付き合ってくれたとは思う。だが、私のメディア露出がパートナーの会議でも話題になるようになり、次第に私に向けられる視線は冷たくなる。

そうして、私は急速に“干されて”いく。