なんとか関係を進展させたい

そしてクリスマス当日。僕はクリスマス”デート”に珍しく緊張していた。
早々に仕事を切り上げ、予約していた麻布十番の個室焼肉店へ向かう。店近くで彼女と合流するも、予約時刻まで少し時間があったので近くのBARに寄ってから、いざ焼肉店へ。

なんともすごいお店に来てしまったようだ。店の前には黒いアルファードが複数台止まっており、今にも人気アイドルがお店から出てきて、最短距離で乗り込みます!というようなベストポジションを陣取り待機していた。
店内に入り納得した。きらびやかな店内、全て個室。まるで迷路だ。芸能人はこういうお店で食事をするのか。物珍しさで心躍ったが、その反面プライベートで窮屈さを感じることもあるかもしれないなとおせっかいな感情を抱いた。たまには、あけすけの大衆居酒屋でもつ煮を食べながらホッピーを飲みたいだろうに。

ここは高級焼き肉店ではありません 写真提供/つーたん
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「メリークリスマス! 乾杯!」

“焼きしゃぶサーロイン”という大きな薄切りの牛肉をさっと炙り、卵に絡めて頂く。なんだこのとてつもなくうまい食べ物は。あの衝撃は未だに忘れられない。

この日も時間を忘れて楽しいひと時を過ごした。どうにか2人の関係性を前に進められる様な話がしたい、クリスマスらしくロマンチックな話題を、と思ってはいたものの、やはり中々切り出すことが出来なかった。この楽しいひと時、関係性を失ってしまうかもしれないと思うと、躊躇してしまった

そして帰りがけに、用意していた羊柄の腹巻きをプレゼントした。
泊りがけの地方ロケが多いと聞いていたので、風邪を引かないようにと。

「え! ありがとう! すぐ使うね!」

クリスマスプレゼントにしてはあまりにも役不足だったけれど、彼女はとても喜んでくれた。そして2人の関係性を前に進めることは出来なかったけれど、この日も笑顔で別れた。