提供/トヨタ自動車

よりよい未来のため、進化し続けるモビリティと、あるべき姿へ再生を図る自然環境。一見すると対極的に思えるこれらが共生する世界とは? その糸口を探るために
トヨタ自動車が取り組む事例を紹介しよう。

大塚友美(おおつか・ゆみ)/トヨタ自動車チーフサステナビリティオフィサー・執行役員
1992年トヨタ自動車入社。初代ヴィッツ等国内向け商品の企画、ダイバーシティプロジェクト等の人事施策企画・推進、海外営業部門にて収益・人事管理、未来のモビリティのコンセプト企画、GAZOO Racing Company(モータースポーツ・スポーツカー)統括等、複数分野を経験。途中、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスにてMBA取得。デピュティ・チーフ・サステナビリティ・オフィサーとしてサステナビリティへの取り組みを担当。2021年6月より現職。

世界一でも日本一でもない“町いちばんの企業”

昨年12月のバッテリーEV戦略の説明会が記憶に新しいトヨタ自動車。カーボンニュートラルの実現が世界に求められるいま、移動すべてに関わるモビリティカンパニーとしての役割をどう捉えているのか。トヨタのサステナビリティを推進する大塚友美さんに話を伺った。

「モビリティカンパニーと自然が共生すると考えると難しく捉えられがちですが、私たちは地域コミュニティの一員として、美しいホームプラネットを次世代につなぐために、一人ひとりに何ができるのか。地元の方たちの顔を思い浮かべながら、“町いちばん”の企業を目指し、取り組んでいるところです。

“町いちばん”というのは 社長が就任前から大切にしている考えで、『グローバル』や『世界一』ではなく、私たちがお世話になっている町で、いちばん信頼され、いちばん愛される会社を目指すことです。私たちは自然に抱かれた存在でもあります。そう捉えると、“町いちばんの企業”として、自然に対してできることがたくさんあることに気付かされます」

トヨタは、環境保全活動はもちろん、人々が暮らしやすい社会を叶えるため、"もっといいクルマづくり"を目指し全国で多様な取り組みを行っている。その活動すべての根源にあるのが、「自分以外の誰かのために」という"YOUの視点"。その精神を軸にミッションである"幸せの量産"に挑み続けている。

「"幸せの量産"とは、決して同じものを大量生産するという意味ではありません。一人ひとりの幸せに向き合い、多品種少量を量産すること。多様化が進み、不確実性の高まるいま、幸せを量産するには、多くの選択肢を提供する必要があります」

そのカギとなるのがやはり"YOUの視点"。この考えは、創業者の豊田佐吉さんが、夜遅くまで働く母親を楽にしてあげたいと、自動織機をつくったことに始まり、トヨタの原点ともいえる。

「自分以外の誰かのために幸せを願い行動できる"YOUの視点"を社員みんながもつことで、可能性のさらに先へと進んでいけると信じています」

自然から学び、地域と共生「トヨタ白川郷自然學校」ほか

岐阜県にある白山国立公園の麓に位置する「トヨタ白川郷自然學校」は、雄大な自然に囲まれた誰でも遊びながら学び泊まれる体験型施設。スノースライダーやトレッキングなど、四季折々のアクティビティを通じて、自然を身近に学べる場として親しまれている。また、「自然は地域や社会の重要な基盤であり、自然が抱える課題は地域の課題。私たちは地域コミュニティの一員であることを意識したうえで、学び、感謝する人を育成することが大事」という考えから、他にも地域の生態系保全や交流の場として、堤工場内に建設された「びおとーぷ堤」をはじめ、地域それぞれに適した環境保全活動などの取り組みを行っている。

「いまある自然は先人たちの手によって守られてきたもの。なのでいますぐに成果が出なくても、活動を続けることでやがて実となり、その実を次世代の人たちが受け取る。自然と触れ合っていると『自分以外の誰かのために』という“YOUの視点”を感じやすいと思います」(大塚さん)

地域コミュニティとともに自然を守る「トヨタテクニカルセンター下山」

自然とのかかわりから、環境課題と向きあうだけでなく「地域との共生」も重視している。そのひとつに“もっといいクルマづくり”の拠点として、愛知県豊田市と岡崎市にまたがる中山間地域に建設したテストコースがある。自然の地形を活かした約75mの高低差と多数のカーブが入り組んだ厳しい環境でクルマを徹底的に鍛え上げる一方で、敷地面積の森林を約6割残し、荒廃した里山環境の再生も図る。生態系・生物多様性の保全を目的とし、稀少生物がエサ場とする田んぼの維持管理、下山で採れた種を育て、切り崩した山の斜面に植樹するなど、地域の方たちとともに様々な活動を実施。残された自然環境のポテンシャルを上げ続けている。

「『トヨタテクニカルセンター下山』のメンバーたちは、そこで暮らしている方がたの地域コミュニティに入れていただくという想いのもと、地元のお祭りに参加させてもらったり、環境保全のための田植えなどを一緒に行ったり、コミュニティの一員として地域の方がたと一丸となって自然を守りながら、開発に取り組みました。下山には見晴らしのよい展望台があるのですが、それも地域の方がたのアイデアからつくられたんですよ」(大塚さん)

多様な地域のニーズに寄り添う「バッテリーEV」

自然や地域コミュニティと共生しながら“もっといいクルマづくり”をしてきたトヨタが目指すのは、誰ひとり取り残さないカーボンニュートラルな未来の実現。2030年までにSUV、スポーツカー、コンパクトカーなどフルラインナップで30車種にバッテリーEVを投入。年間販売台数は350万台を目標に掲げる。またバッテリーEV以外の電動車にも取り組み、世界各国・地域のいかなる状況、あらゆるニーズにも対応できるよう、カーボンニュートラルの多様な選択肢を提供する。

「世界中には多種多様な道があり、利用する人たちも用途も様々。たとえば再生可能エネルギー需要の高い国ではバッテリーEVを、まだまだ化石燃料が主流の日本では、今後どんどん高まっていく再生可能エネルギー需要に合わせて、ハイブリッド車と並行させながらバッテリーEVへのシフトを図るなど。各国でエネルギー事情や使い勝手も異なるので、カーボンニュートラルに向かっていくやり方も多様な選択肢が必要だと思います。誰ひとり取り残さない、みんなが幸せになれる方法を模索しながら取り組んでいるところです」(大塚さん)

町いちばんの企業を目指し、地域の方たちに寄り添うこと。この視点は、トヨタのミッション“幸せの量産”を実現するうえで欠かせない重要な要素となっている。

【編集後記】
大塚役員にお会いするのは今回で二度目。一度目はちょうど一年前の春。FRaU MOOK「今日からはじめる、私の働き方改革。」にて、フリーアナウンサー中村仁美さんをインタビュアーにお迎えし、大塚役員のこれまでの経験から、グローバル企業での自分らしい働き方について話を伺ったのでした。まだ女性総合職がいなかった入社当初、男性と同じように働かないといけないと思っていたが、多様な部署で経験を積むにつれ、「女性らしく」や「男性はこうあるべき」などといった男女の役割を捨て、自分らしい貢献の仕方を探すことで、自身の働き方も変わったというエピソードがとくに印象に残っています。そして今回は、カーボンニュートラルな未来に向けモビリティカンパニーとしての役割、そして自然と共生するためには、地域コミュニティの一員として捉えることがいかに重要かを教えていただきました。二度にわたる取材を通じ、いま世界が抱える社会課題に立ち向かう“トヨタの本気”に触れ、日本にトヨタという企業が存在することに安堵感を抱くと同時に、いち企業の話ではなく、私たち生活者との“つながり”の深さも実感しました。無数の社会課題、コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻……世界中が不安に飲み込まれる今こそ、トヨタの創業当初から継承する「自分以外の誰かのために」という“YOUの視点”が、一人でも多くの人に広がっていくことを願うばかりです。(大森奈奈)

●情報は、FRaU2022年3月号発売時点のものです。

illustration Chihiro Yoshii photo Rana Shimada text & edit Nana Omori

トヨタ自動車株式会社 SDGsへの取り組み