3月8日は国際女性デー。女性の権利を守り、政治的、経済的、文化的社会への参加と地位向上を訴える日。そこで昨年末に開催されたSDGsの実現を議論するイベント「日経SDGsフェスティバル(主催:日本経済新聞社)」でFRaUと日経がコラボレートしたディスカッション「Lifestyle’s SDGs! with FRaU」の様子をお届け。女性エンパワーメント活動家兼映像プロデューサーのチュック・ベッシャー氏が司会を勤め、ゲストにソウルフルな歌声で魅了する人気アーティストAIさんとFRaU編集長 兼 プロデューサー 関龍彦が登壇。歌とメディア。それぞれの分野で“伝える”という立場から、女性のエンパワーメント向上に必要なことは何か。ディスカッションを行った。

男性社会ゆえに、女性の力を発揮できていないというのはもったいないこと

チュック・ベッシャー(以下チュック):SDGsのゴールすべてに共通するのは、女性がエンパワーメントしていないこと。つまり女性がエンパワーメントしていないと、SDGsのどのゴールも達成されないのです。というと、「『海の豊かさを守ろう』が女性のエンパワーメントにどう関係するの?」と思われるかもしれませんが、そのように一見すると無関係に思えるゴールもすべて女性が政策設定や課題解決に関わってこなかった結果なのです。長きにわたり女性誌に携わってきた関さんは、この女性のエンパワーメントの重要性についてどう思われますか?

関龍彦(以下関):この日経さんとのコラボディスカッションを「Lifestyle’s SDGs! with FRaU」と名付けたのですが、そこには「女性なしではライフスタイルは成り立たない」という思いがあります。全員がそうとは言い切れませんが、女性にはSDGsにおけるアクションをライフスタイルに取り込むのが得意な人が多い。なのに2018年の女性のSDGs認知率は非常に低いとされていたことから、女性の認知を高めるためにSDGs号を刊行しました。

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またフェミニズムという言葉は、元来女性を助けようとかそういうことではなく、性差によるネガティブな事柄をなくすこと。SDGsのゴール達成はみんなの力を合わせ、イノベーションを生まないと絶対に達成できないなかで、男性中心の社会であるゆえに、女性の力を発揮できていないというのは、もったいないことですよね。

チュック:AIさんは二児の母でもありますが、ご家庭でのパートナーシップにおいてはいかがですか?

AI:夫とパートナーシップを築けていないと、いま私はこの会場にいません。子どもを幼稚園に連れていくのもお弁当をつくるのも、ふたりで助け合うことができれば、ポジティブな気持ちで仕事にいけるんです。それだけで素晴らしく、ありがたいことです。

AIさんの活動はこちらをチェック! 画像/日本経済新聞社提供

チュック:SDGsには持続可能性のほかにもうひとつ大切な概念があります。それは「相手を思いやること」。思いやりの心がないと、次世代が直面する問題を想像できないし、SDGsのゴールに真剣に取り組むことができません。家族、隣にいる人、隣の国の人……そして次の世代に対して思いやりを持つこと、そして相手も地球も使い捨てでないという考え方が重要なんです。そこでAIちゃん。ヒット曲「ハピネス」から、相手を思いやるということについてお話をうかがえますか?


AI:まさに私の日常はこんな感じで、毎日本当に余裕がなくて(笑)。仕事現場でも「おはようございます!」と元気な声で挨拶できない日もあるんですが、そうすると相手に「何かあったのかな?大丈夫かな?」と余計な心配をかけてしまいますよね。そんな当たり前のことを、余裕がない時ってつい忘れてしまうんですよね……。そんな私のことを分かってくれている人がいるからこそ、ちゃんと心がけたいなと思います。

チュック:そうやって分かってくる人って、なんとなく自分と似通った人だったりしますが、たとえば価値観のまったく違う人だとどうでしょう? 「Not So Different」は、そんな側面をおもしろく捉えていますが、どんな思いでつくられたのでしょうか。

AI:周りの人やテレビのニュースでみる他国の人、その誰かがつらい思いをしている前で、自分だけが最高!みたいな気持ちにならないですよね。やっぱり自分が幸せになるためには、まず周りの人たちをハッピーすること。そうすれば安心して自分も幸せでいられる。意見の食い違いによる喧嘩はいいんです。ただ武器が出てきたり、人を傷つけたりするのは、なぜそうなってしまうんだろうといつも考え込んでしまいます……。でも生まれたときはみんな赤ちゃんだったんですよね。そう思うと一気に人が可愛く見えるというか。みんないろいろな思いを抱えながら生きているし、どういう気持ちで今日を過ごしているのか分からない。そう思うと、相手の立場になって考えることがすごく大事だなと。私はすぐに忘れてしまいがちだから、自分を奮い立たせるためにも曲を書いているんだと思います。

チュック:女性の地位向上を目的とする国連女性機関「UN Women」に「HeForShe」という考え方があります。男性は女性になにができるのか。FRaUでは「ニッポンの宿題」をテーマにされていますが、企業の宿題、自分の宿題として、男性は「HeForShe」について考えてみてはいかがでしょうか。たとえば採用時の候補者の男女平等化や女性の職場環境の保全に関するコミット。あとは声を挙げることですね。女性がハラスメントを受けていたら、黙っていない、空気を読まないことが大切です。関さんはなにかご自身の宿題はありますか?

関:編集長という立場でいうとFRaU SDGs号を2030年までつくり続けること。それが女性のエンパワーメントにつながればと。あと個人としては日本だけでなく世界中の声を受け取り発信するためにも、もう少し英語の勉強をがんばりたいと思っているところです。

「誰かのためは、自分のためでもある」思いやりから生まれるよい循環が、SDGsを進める大きな力になると主張。関龍彦 画像/日本経済新聞社提供

チュック:僕は男性目線の「HeForShe」だけでなく、女性目線の「SheForShe」を提案したいと思っていて。女性も、同じ女性に目を向けて支え合うようなことがもっとあってもいいんじゃないかと。AIちゃん、「SheForShe」目線で何か課題に感じていることはありますか?

AI:誰かを蹴落とそうとするような行為は本当になくなって欲しい。せっかく本人は前に進もうとしているのに、周りのネガティブな声に惑わされしまったり。なにか良いアクションを起こそうとしている人の行動は応援してあげる気持ちで、みんなが協力し合えたらいいですよね。「なにか困ったことがあったら言ってね」みたいな優しさって、人から人へと連鎖していくので。いいなと思うことをみんながもっと実行に移していくと、世の中はすごく変わっていくと思いますけどね。

関:「HeForShe」は、男性が女性のために何ができるのか、という意味ですが、その結果、男性も幸せになれるものだと思うんですね。そう捉えていない人は、どこかで自分が犠牲になるような感覚を抱えてしまっていたりするのではないでしょうか。性差の問題を解決すれば日本はよくなっていくわけですし、SDGsも進むかもしれない。結局は自分にも返ってくるんですよね。先ほどAIさんのお話にもありましたが、自分がハッピーだと、人にも優しくできるというよい循環が生まれるので、人のためであり自分のためであると捉えた方が、どんなアクションも続けられるんじゃないかなと思います。

チュック:僕自身の宿題は、女性のエンパワーメントを根幹に捉え、いろんな方々の声を聞いて発信するプラットフォームを、女性たちとともにつくりたいと思っています。

ジョークを交えた和やかなトークに人柄があらわれていたチュック・ベッシャーさん 画像/日本経済新聞社

関:FRaUというエンタテイメントを通じて、読者の心にどう届けるのかを考えながら情報を発信していますが、AIさんは歌を通じて、みんなにメッセージを発信している。プロフェッショナルとして、取り組んでいることは近いのかなと思っています。今後も引き続きメディアとしてできることを、このように思いをひとつにできる方たちと一緒につくっていきたいですね。

チュック:関さんとの新しい出会い、AIちゃんと続いている環境に感謝して、今日はこの辺りで終わりたいと思います。ありがとうございました。

取材・文/大森奈奈

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