教育や虐待についても長く取材をしており、多くの書籍も手掛けているジャーナリストの島沢優子さんが、今年思わず最新刊まで大人買いしたというのが、「月刊フラワーズ」に連載中の田村由美さんによるマンガ『ミステリと言う勿れ』だ。2022年1月期のドラマとして月曜9時からドラマが放送されている本作には、いじめや虐待をはじめとした、生きていく上で大切な出来事の真理が描かれているという。

連載の「いじめ」に対する主人公の言葉についても、そこが伝える重要な真理についてお伝えした。今回は親から虐待を受けた子どもたちに対する真理を、自身の体験や実際の事件などを踏まえて考察していく。

ドラマを見て思わず現在出ている10巻までを大人買いした島沢さん 写真提供/島沢優子
島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの連載はこちら
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「見捨てられる恐怖」を言い当てた整

フジテレビ系列のドラマ「月9」で人気を呼ぶ菅田将暉さん主演の『ミステリと言う勿れ』。原作は、田村由美さんによる同名漫画。菅田さん演じる大学生の主人公、久能整(くのう・ととのう)が飛びぬけた記憶力や観察力を武器に事件を解決していく物語だ。連載の前々回では、子どもの「いじめの真理」というテーマでドラマの第4話(原作では2巻)について書かせてもらったが、社会課題のリアルを切り取る作者の鋭い視線に驚かされる。

ドラマの第6話(原作では5巻)では、虐待に遭う子どもが、「天使」と呼ばれる被虐待児だった過去を持つ男性から「君のパパやママを殺してあげる」と持ち掛けられる、という衝撃的な内容だった。現実の社会でも、私たちの国は18歳未満の子どもへの児童虐待が30年連続で増え続けている。2020年度は過去最多の20万5029件になった。20万件を超えたのは初めてだ。子ども受難社会は非常に現実的なものだ。

(C)田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』5巻より
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さらにドキリとさせられたのが、久能が虐待問題の根っこを指摘した場面だ。児童虐待が判明し親が逮捕されたあと、親に追い詰められた末に無事保護された子どもは「お母さんに会いたい」とずっと泣いていた。それを伝え聞いた刑事が「どんな親でも子どもは大好きだろ」と言う。そこにいた久能がこうつぶやく。
「それ、いい話じゃないです。子どもの気持ちに大人はつけ込むので。
でも…でも、母親も、追い詰められている」

(C)田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』5巻より
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以前児童虐待の取材をした際、虐待されている子どもは「たたかれるのは私が悪いから」「僕がいい子じゃないから」と贖罪の態度を見せると聞いた。彼らは「ママは何も悪くないからおうちに返して」と親を求めることが多い。たたかれる痛みよりも、見捨てられる痛みのほうが怖いからで、見捨てられたらおしまいだと感じてしまう心理は「見捨てられ恐怖」と言われる

これは、殴られても蹴られてもDV夫のもとに戻っていく妻の心理と同じ「トラウマ性結びつき(トラウマティック・ボンディング)」に起因。暴力などのトラウマ体験を与える対象と「離れたくない」と感じしてしまう特殊な心理を生む。象徴的な事例として挙げられるのが「ストックホルム症候群」だ。