『闇金ウシジマくん』(2010~2016)『やれたかも委員会』(2018)『新しい王様』(2019)など、数多くの問題&話題作ドラマを世に放ってきた山口雅俊プロデューサーの最新作『おいハンサム!!』(フジテレビ/東海テレビ 土曜23:40~)が、いよいよ最終回を迎える。伊藤理佐さんの人気コミック『おいピータン!!』『おいおいピータン!!』ほか、いくつもの作品をリミックスしたオリジナル脚本によるものだ。

「食」と「恋」をベースに「家族」の日常を描きながら、人生の機微をじんわりと伝え、「面白いと思ったら『新しい王様』『ランチの女王』の山口プロデューサーだった!」「伊藤理佐の魅力が詰まってる」「深夜だけど今クールで一番好き」とSNSでも多くの声が寄せられている。

他に類似品のない、この稀有なドラマはいかにして生まれたのか。原作、テーマが先か、あるいはキャスト先行なのか。その発端から制作現場のエピソードまで、脚本・演出・プロデュースを手掛ける山口雅俊監督・プロデューサーの頭の中を覗かせてもらった。スペシャルインタビュー前編では、竹内結子さん主演の『ランチの女王』以来20年ぶりに「食」を描いたドラマを作った理由を伺う。

山口雅俊(やまぐち・まさとし)フジテレビのプロデューサーとして企画・プロデュースした代表的な作品は以下の通り(カッコ内は主な出演俳優)。「ナニワ金融道」シリーズ(中居正広)、『ギフト』(木村拓哉)、「きらきらひかる」シリーズ(深津絵里・松雪泰子・小林聡美・鈴木京香)、『カバチタレ!』(常盤貴子・深津絵里)、『ロング・ラブレター~漂流教室~』(常盤貴子・窪塚洋介)、『ランチの女王』、『不機嫌なジーン』(ともに竹内結子)など。フジテレビを独立後の企画・プロデュース、脚本、監督などは以下の通り。映画「カイジ」シリーズ(藤原竜也)を立ち上げた後、ドラマ・映画「闇金ウシジマくん」シリーズ(山田孝之)、ドラマ「新しい王様」シリーズ(藤原竜也・香川照之)。
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伊藤さんの作品に会い、竹内結子さん追悼の想いも…

「発端としては、伊藤理佐さんの作品との出会いが先です。『あさって朝子さん』という作品に衝撃を受け、読んですぐに、これはおもしろくできるだろうと思った。版元に電話をして、実写化したいとお話したんです。“本人と話してください”と言われたので、伊藤理佐さんに直接連絡しました。これまで実写化されたことがないのなら、他の作品も全部やらせてくださいとお願いしたところ、 “どうぞどうぞ”と快諾してくださった。あとから聞いたら、すごく怪しんでいたみたいでしたが(笑)。ただ、今まで手掛けてきた『ナニワ金融道』『きらきらひかる』『闇金ウシジマくん』『カイジ』同様、ひとつの原作を形にするには、ものすごく時間がかかる。数年経ってやっと、『おいハンサム!!』として実現したんです」

最初に山口監督が出会った伊藤理佐作品『あさって朝子さん』(マガジンハウス)

『カバチタレ!』『闇金ウシジマくん』『新しい王様』からのホームドラマと考えると、どこか異色な印象だ。だが遡れば、山口監督による『ランチの女王』(2002年)へと辿り着く。竹内結子さんが演じる麦田なつみを主人公に、堤真一さん、江口洋介さん、妻夫木聡さん、山下智久さん演じる兄弟の店「キッチン・マカロニ」を舞台に繰り広げるホーム&ラブ・コメディの名作だ。『ロング・ラブレタ―~漂流教室~』と同じ年の放送で、山田孝之さんも出演している。

「『ランチの女王』は自分としても、とても愛着がある作品でした。ですが、続編をやりたいとなったときに、もう竹内結子さんをキャスティングすることはできない。そういった現実を突きつけられたときに、『ランチの女王』に変わるジャンルのものをやってみたいと思ったんです。役者さんが表の企画、例えば王道のラブストーリーをやったあとに、裏の企画として真逆のもの、シリアスなものをやりたくなるような感じで、僕もどちらも楽しんでやれるというのがある。『闇金ウシジマくん』『新しい王様』が裏の企画だとすれば、『ランチの女王』『不機嫌なジーン』は表の企画ということになる。竹内さんを追悼する気持ちも込めて、改めて、表の企画の家族もの、恋愛ものをやりたいと思ったんです。

竹内さんとは、またいつか一緒に仕事ができるという感覚がありつつ、具体的に詰めて話し合ってはこなかった。失ってみてはじめて、もっとコミュニケーションをとっておくべきだったと痛感した。そういった人との関係や、喪失というものを経験した上で、伊藤理佐さんのマンガをドラマ化して、吉田鋼太郎さんが主役をやってくださるということになったので、“人とは”“人生とは”というのを鋼太郎さんに語ってもらおうと、イメージが徐々に固まっていきました」

伊藤作品との出会いと、竹内さんへの想い、様々なタイミングが重なってドラマになっていった(c)東海テレビ/日本映画放送