2022年1月25日にライブ生配信された『META歌舞伎 Genji Memories』が話題だ。これは、古典文学の名作『源氏物語』の舞台をバーチャル空間に作り、歌舞伎俳優の動きとリアルタイムで合成させるという最新技術と古典芸能を融合させた作品。この総合演出を務めたのは中村壱太郎さん。光源氏を取り巻く六条の御息所や葵の上など5役を演じ分け、女の苦しみや喜びを仮想空間上で演じた。

さて、『源氏物語』といえば、国内外で累計1800万部以上も売れた、不朽のマンガ作品『あさきゆめみし』。原作者の大和和紀さんの画業55周年を記念し、新装版が発刊され、新しいファンを増やしている。

全7巻で先日完結した新装版

『源氏物語』をバーチャル空間での歌舞伎で表現した中村壱太郎さんと、マンガで表現した大和和紀さんのスペシャル対談。古典文学をエンタメ作品として昇華させたお二人が、『源氏物語』の魅力を語り合っていく。

大和和紀(やまと・わき)
北海道生まれ。1966年デビュー。代表作に『はいからさんが通る』『あさきゆめみし』『ヨコハマ物語』『N.Y.小町』『にしむく士』『紅匂ふ』『イシュタルの娘〜小野於通伝〜』など多数。アニメ・映画・舞台化もされた『はいからさんが通る』で1977年に第1回講談社漫画賞を受賞。2021年画業55周年を迎えた。
中村 壱太郎 (なかむら かずたろう)
1990年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。1995年1月大阪・中座『嫗山姥』の一子公時で初代中村壱太郎を名のり初舞台。以降、歌舞伎の舞台に精進しつつ、2016年、野田秀樹作現代劇『三代目、りちゃあど』に出演、同年のアニメ映画『君の名は。』劇中の巫女の奉納舞を創作など、活躍の場を広げている。2020年7月新感覚の歌舞伎とアートのコラボからなる配信公演『ART歌舞伎』を上演し国内外から高い評価を得る。
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ひとり5役を演じ分けた中村壱太郎さん

大和和紀さん(以下・大和):『META歌舞伎 Genji Memories』を拝見しました。生の舞台と違って、背景がCGというのも斬新でした。おひとりで5役を演じ分けたところ、セリフや言葉も素晴らしいと感じました。

(c)松竹 『META歌舞伎 Genji Memories』より

中村壱太郎さん(以下・壱太郎):ありがとうございます。今回の作品は約 30分間で、光源氏の青年時代、夕顔が亡くなるところまでを扱いました。わかりやすくしつつ、作品の持つ文学性をどこまで表現するか、脚本家の横手美智子先生のお力をいただきながら、方向性を決めて行ったのです。
この制作過程で、『源氏物語』のバイブルだと皆が異口同音に言う『あさきゆめみし』も拝読しました。それぞれの登場人物、和歌も含めて、言葉も美しく、たくさんのヒントをいただきました。

大和:とてもありがたいです。「受験に役立った」とよく聞きますが、歌舞伎のお役に立てたことも、うれしいです

壱太郎:そうだ、私は怪盗光源氏君が登場するマンガ『ラブパック』(大和和紀著)も読みました。

大和:そうなんですか!

壱太郎:歌舞伎作品ならではの魅力に“飛ぶ”という演出があります。これは非現実的だったり、荒唐無稽なものを、物語に落とし込むことも指します。『META歌舞伎 Genji Memories』は、劇場で演じる作品とは異なるので、歌舞伎ならではの要素“飛ぶ”を取り入れました。スピーディな物語展開や、ワイングラスやシーシャを登場させましたし、綿密な時代考証を無視して、女性が庭に出てきたり。

大和:そうなんですよね。『源氏物語』は室内で物語が進んでいくので、私も『あさきゆめみし』を描いているときに、季節感をどう盛り込むかを苦心しました。『META歌舞伎 Genji Memories』はスッと物語に入れましたよ。六条の御息所が神秘的かつ怖く描かれていたのもよかったです。